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7
「先輩?あの、大丈夫ですか?なんかボーっとしちゃってますけど」
「だっ、大丈夫だよ。それより……えっと、仕事の後ってなんか予定ある?」
ダメもとで聞いてみることにした。幸いにも首は横に振られる。
「なにもないです」
「そっか。なら......夕飯でも一緒にどうだ?」
やかましい心臓音を必死におさめながら言うと、目を丸くした後輩の頬がわずかに緩む。それから今度は首を縦に振ってくれた。ああよかった。またこの子の笑顔が咲いた。今日はなんだか一段と輝いていて鮮やかで、思わず魅了されてしまう。
気をそらすように窓の外に視線を向けてみると、そこには眩しいくらいの夕焼け。だいぶ陽がのびてきて、季節はまもなく夏か。『カンナ』もまた、満開に咲いてのびる時期なんだったな。
だったら今夜はそんな話をしながら、目の前の『カンナ』と連れ立って。馴染みの洋食店にでもゆっくり歩いていくとしよう。
退勤後のそんな楽しみを思うと自然と背筋がのびる。残りの仕事にも一気にやる気が湧いてきた。
-end-
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