意外と優しいヤンキーのあいざわさん。

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 私はパニックになっていた。僕の名前は山園駆(やまぞのかける)、何の変哲もない高校一年生だ。  僕と言う人間は小学校の時から現在まで、運動神経と勉強はダメダメ。身長は低くて、周りからはチビ、マスコットと言うニックネームになっている。 (あわわわわわ…………)  教室にて、席の隣の窓際の席。そこに座り、窓を眺めているヤンキー女子の所澤秋(ところざわあき)。金髪のショートヘアーにピアス、鋭い瞳はまるで獅子のよう。  ヤバっ。  彼女は視線を感じたのか、駆(かける)に視線を向ける。僕は机の前に伏せ、思わず視線を反らす。 (がくがく………ぶるぶる)  僕はこの彼女に対し、怖くてパニックになっていた。春の席変えにて隣の席で一緒になり、考えているだけでブルブルが止まらない。  何故なら彼女、ヤンキー女子としては珍しく、武闘派。近所の男性のヤンキー相手でも平気でやり合って勝つので、隣の僕からしたらめちゃくちゃ恐い。  ★★★★★★ ───そして、授業中にて、僕は考えながら憂鬱になっていた。 (ハァ………席替えして、何て憂鬱なんだ………)  僕はチラチラと彼女を見ながら様子を伺っていた。 「山園(やまぞの)、聞いているのか?」 「はいっ」  突然として耳に入って来たのは歴史担当の男性教師の渡辺。渡辺先生はチョークをトントンと叩き、口を開く。 「なら、この問題を答えてもらおうか?」 「えっ?………ちょっと、えっと………」    駆(かける)は額から冷や汗を流し、パニックになりながら立ち上がり、パラパラと教科書を開く。もちろん、聞いてない。 ───すると。  それは駆(かける)の左横の位置。所澤秋(ところざわあき)はそっとノートに書いてある(答え)見せてくれていた。所澤秋(ところざわあき)は、ムスッとした様子で。 (えっ?………)  その様子に、びっくりする駆(かける)。 「聞いているのか山園(やまぞの)っ?」と、渡辺先生は言ってくる。 「はいっ………」  その後、答えを言ってその場をやり過ごした。席に座った相澤秋(あいざわあき)は、元通りにムスッとして窓を眺めていた………。 ───昼休憩。  校内の購買店にて、生徒達でごった返していた。駆(かける)はいつもの焼きそばパンを手に取り、会計に向かう。 「158円だよ」と、購買店のおばさんは言う。  サイフを空ける駆(かける)。  あっ………と、またパニックになる。何故ならサイフの中には150円しかない。  どうしよう、どうしよう………と、途方に暮れる。 「コレ、使って………」  駆(かける)の後ろから手が伸び、レジに100円が叩きつけられる。  「えっ?………」  後ろを見たら、あの相澤秋(あいざわあき)。彼女は100円を置いた後、ムスッとしながら立ち去って行った。その後、教室に戻って、めちゃくちゃビビりながら(ありがとう)と、伝えたけど、彼女は一瞬だけこっちを向いて頷いた後、再び窓際を眺めるのである。   ───そして、放課後。下校時間になり、外に出ようとする。 (あららららら………)  しかし外は豪雨。季節は夏の為、天候は変わりやすい。しかし、駆(かける)は傘を持ってない。すると………。 「はいっ」 「えっ?………」  突然だった、声はあの相澤秋(あいざわあき)。駆(かける)の手には、かわいいクマのアップリケ模様の折り畳み傘が渡されていた。 「あいざわさ………」  駆(かける)は手を伸ばし、彼女を呼び止めようとしたけど、彼女は傘を広げて走り去って行った。 ───そして、彼女に渡された折り畳み傘を広げ、下校する駆(かける)。見た目はヤンキー、けど中身はかわいくて何処となく優しい彼女の話であった。    
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