プロローグ

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プロローグ

「大成功でしたね。ん? 社長、どうしました?」 「ちょっと外の空気を吸ってくる」  ……どこにいるんだ? もしかして帰ってしまったのか。  すると事務所の奥の部屋からそろばんを弾く音がした。彼はそっと開けた。 彼女は一人で仕事をしている。  ……もう次の仕事をしているのか。休む気は無いのか。 「君。みんなで打ち上げをしているぞ。食べ物もあるぞ」 「……私は見習い社員なので。私の分は無いです……」 「え」  彼の驚き顔に気が付かない彼女は急ぎ、片付けた。 「それに本当に時間がないんです。あ? もうこんな時間? すみません。失礼します!」 「あ、ああ」  彼女はそういうと、彼を置いて帰っていった。 「社長。ここにいたんですか? みんな、待っていますよ」 「……今。行く」  彼は彼女が座っていた席を、そっと見つめている。  
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