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乗り越えた先の未来 2
私は、碧が離れていく夢を見ていた。
それを見る度にパニックを起こしてしまい、胸に痛みが走ったり窒息感を持つ様になってしまった。
(お願い⋯!
私を置いて行かないで、碧。苦しいよ、痛いよ助けて碧!!)
「愛さん?大丈夫ですか!」
悪夢からようやく開放され勢いよく起き上がった時、保健室の麻紀先生が慌てたように声を掛けてくれた。
「はぁはぁ⋯だっ大丈夫です。」
呼吸を整え、汗を拭い取り笑顔で答える。
「ならいいけど、あなたとても苦しんでいたわよ…。もし酷くなるようなら病院で見てもらいなさい。」
「はい⋯。」
そうは言ったものの、あくまで心理の問題らしく病院で何とか出来るものではなかったのだ。結局は、自分自身で変わるしかないみたい。
少しゆっくりと過ごした後、私は急遽心理カウンセリングを受けることとなった。
コンコンコン⋯。
扉をノックすると中からドア越しに「はーい。」と言う透き通った声が響いていた。
「失礼します。」
あまり乗り気ではなかった私だが、とりあえずは受けてみようと思った。
「初めまして、やっと会えましたね西園愛さん。」
「へっ⋯?」
何故、「やっと会えましたね」なのだろうか?
私の頭の中は、点でいっぱいだった。
「とりあえず、座ってくれないかな?」
謎の先生の向かい側にある椅子に腰を下ろした。
「それでは、改めまして西園愛さん。
あなたは、高橋碧さんに依存していますよね?」
「依存ではないです!ただ私は、彼を溺愛しすぎているだけだと思います。」
「それは、どうでしょうか。現時点であなたは、碧を自分の傍に置きたい、離れたくないという気持ちで溢れていますよね。」
「なっ、なんでそんな事まで知っているんです?
しかも、碧を呼び捨てで⋯一体何者ですか?」
「あっ、言い忘れていたわ。私の名前は西園愛、あなたの10年後の未来からどうしても言いたい事があって来たの。」
(未来の私⋯そんな事が本当に⋯!)
「あの、言いたいことって…?」
「今のままでいたら、碧は他の女子と結婚してしまうわ。これから話すことは、絶対にあなたが変わらない限り確実に起こる話。
10年後も私は碧を溺愛しすぎていたの。それで、碧を苦しめてしまった。1度付き合う事が出来たのはいいものの、他に好きな人が出来たと別れを告げられた。」
「そっ、そんな⋯。なら、私はどうしたらいいの?」
「まずは、碧への過度な溺愛を無くすこと。そして、他の男子や女子友達とかを沢山作って普通に過ごすの。そうすれば、もう夢を見てもパニックを起こさなくなるし碧に振り向いてもらえる確率は上がると思うわ。」
(私に、それが出来るかな?)
「大丈夫よ。今心配で不安でいっぱいだと思うけどこれを乗り越えた先の未来であなたが、碧が幸せになるためにはこの方法が最適だと思うの。」
「分かった、頑張ってみるから。幸せな未来で待っててね!」
「うん、さすが私だね。」
小さな声で囁いた未来の私の言葉に、誇らしさを感じた。
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