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乗り越えた先の未来 3
あれから、既に3週間が経過していた頃。
私は、少しずつ碧への依存を抑えられるようになってきていた。そして、他の男子との関わりを増やせている。
今まで、そんなに男子と話をしたり遊んだりしたことはなかった。でも、案外楽しかったりもする。
そんな感じでまぁ充実していた。
とある日、放課後に忘れ物をしていたことに気がづいた私は教室へ取りに戻っていた。
辺りは、静寂さを増していて少し心細かった。
何とか、教室の数歩手前まで来た時中から話し声が聞こえてきた。
耳をすまして見ると、
「あっ、あのっ!
碧君、私ずっと前からあなたの事が好きなんです。だからっ!私と付き合ってくれないかな?」
音楽部の演奏が響く中に、碧へ告白をしている声が混じっていた。
(うっ、嘘⋯。でも、モテるから仕方ないよね。)
自分を説得するも、胸が苦しくなる。
涙が止まらない。
私は、碧の返事を聞きたくなくて廊下を全力疾走した。その時にはもう、忘れ物の事なんて眼中にもなかった。
足音をバタバタと立てているのにも気が付かった。
階段を下っていた頃、後ろを振り返ると碧が私の後を追って来ている。
(お願いだから、こっちに来ないで⋯。今は、今だけは一人にしてよ⋯。)
溢れる涙を碧には見せたくなかった。
それに、倒れた時に言ったあの言葉の返事をまだ聞きたくはなかった⋯。
でも、走るのが速い彼はあっという間に私の手を引き寄せて胸に抱きとめていた。
(えっ、なんでこんな事するの⋯?
私、碧の事好きなんだよ⋯意識しちゃうよ?
勘違いしちゃうよ?)
「あ、の碧⋯?」
「さっきの話、愛は聞いてたんだろ⋯?」
多分、碧は優しいから「いいよ」って答えたに違いないと思う。
「あ、うん。たまたま忘れ物を取りに来た時にね。」
私は、あえて笑顔で答えた。
「愛は、どう思った⋯⋯?」
(どうって⋯。そんなの決まってるじゃん…。)
「い、嫌に決まってる!」
「ふははっ、ごめん。もう断ったあとだからさ安心してよ⋯っ。」
「もっ、もー、どうして先にそれを言わないかなー?」
「だって、愛の気持ちが知りたかったからさ。」
トクンッ⋯⋯。
その、何気ない言葉に私はときめいてしまうのだ。
「それって、どういう⋯?」
この、沈黙が私の鼓動を更に加速させていく。まるで、特急列車のようだ。
「俺さ、愛の事がずっと好きなんだよ?」
抱きしめられたまま、語りかけてくれる事実に頬が熱くなる。
「えっ⋯私?」
「う、嘘だぁー。」
信じきれず、疑いの声をかける。
「本心だ、ほら耳を済ませて聞いてみて。」
耳を碧の胸へとくっつけると、脈の音が私よりも早く高鳴っていた。
「こんなに、ドキドキしてくれているんだね⋯。
嬉しい⋯な。」
収まったはずの涙がまた、栓が抜けて流れ出てきたようだった。
「改めて、言わせて欲しい。愛、俺は君の事が好きです。付き合ってください!」
優しく差し出される手を私は、両手で包み込んだ。
「よろしくお願いします!」
まさか、ずっと両片想いをしていたなんて思いもしなかったが、こうして互いの気持ちを確かめあえて良かった。
「ずっと、幸せにするから、愛⋯!」
「私だって、碧の事を離さないからね⋯?」
「「はははっ。」」
会話がどうしようもなくおかしくって、少し笑った。
そして、優しくて暖かい温もりを唇で感じ取った。
『初めてのキスは、甘酸っぱいグレープフルーツの味がした。』
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