3.ヒート side倫

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 おかしい。  私はアルファじゃないのに、真白さんから甘い匂いを感じ始めてる。  錯覚だ。  ベータはオメガのフェロモンを感じ取ることなんて出来ない。  手のひらを舐められて、好きだなんて言われて、感覚がおかしくなってるんだ。  「水が欲しいの?」  私は空いている方の手でショルダーバッグを引き寄せた。水のボトルを取り出す。  左の手のひらをお皿にして水を入れ、真白さんに差し出す。  真白さんは私の手のひらから水を飲む。  真白さんが好きって言ったのは私の手のことだ。  手のひらのこと。  私が、最後に、誰かに好きって言われたのはいつなんだろう。  生命線、運命線。  手相のことは全然分からない。  全ての線を舌でなぞられている。  水が真白さんのあごを伝い落ちる。  真白さんはシャツのボタンを外そうとした。襟元がきついのか着替えたいのか。 「着替えたいの?」  尋ねてしまった自分に心の中で後退る。  どうかしてる。  私はおかしい。そこまでは業務の範囲外だ。 「ん。着替えたい。リン。やって」  オメガが私に甘える。  私の手のひらに彼の舌。  真白さんは私の運命線を舐めて指をしゃぶる。  おへそのあたりからつり上げられるみたい。  おへその下が熱くて、背中には冷たい汗をかいてる。  帰らなくちゃ。  このままここにいたら、私は巻き込まれてしまう。 「真白さん、着替えとタオルは? どこにあるの?」  気持ちと行動が裏腹だ。  帰らなくちゃいけないのに。
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