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彼女は手際がよかった。
よすぎるほどだ。
乾いたタオルが腰の下に差し入れられ、柔らかい濡れた感触が前側に触れた。
この手が好きだと思った。
小さすぎず大きすぎない、ふっくらとした手のひらが優しいと思った。
リンの手から飲む水は、今まで飲んだ何よりも美味しかった。
その手が自分に触れている。
オメガの身体の構造は何度も勉強させられた。
アルファと番になれるタイミング。
妊娠できるタイミング。
そのために何度も教え込まれる。
オメガの身体のどこに性感帯が分布しているか。どこを刺激すると感じやすいか。
前側から後ろ側へ、ふだん人の目には晒さない場所を、濡れた柔らかな感触が移動する。
女の子の手で拭き清められている。
撫でるようにされて、あまりの快感に喉の最奥が暴走を始める。
そこが感じるとは聞かされていた。
こんなに良いと知らなかった。
内臓が全部溶けてしまう。
俺の身体が作り替えられていくのが分かる。
出来損ないのオメガから、オメガに変わっていく。
彼女の手で塗り替えられていく。
けいれんみたいに前歯の間から息が漏れる。
彼女を蹴り飛ばしてしまわないように、走り出しそうな脚をなだめる。
リンに怪我をさせたらダメだ。
それ以上のことまでは意識が回らない。
「リン。こんなの、死ぬ」
だめ。よすぎる。温かくて、柔らかくて、優しく擦られる感覚がたまらない。
彼女が後ろのくぼみを丁寧に拭きあげるタイミングで、俺は乾いたタオルに前を擦りつけた。
そうせずにはいられなかった。
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