4.ヒート side真白

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 前後の刺激で、もう、気が狂いそう。  冷や汗が吹き出す。  手で口を塞ごうとしたときに、自分が握りしめているものに気が付いた。  薄暗がりの水色。  ざらりとした感触。それはホテルで車椅子に乗ったときに、彼女が俺の膝にかけてくれた水色のジャージだった。  命綱みたいにずっと握り続けてた。  聴覚も嗅覚も動物的に鋭くなる。  刺激の全てが内側から自分を撫で回しているみたいだ。  ジャージから、洗剤っぽい匂いと、襟元からわずかに女の子の、リンの、肌の匂い。  くらっとする。  視界が斜めにスライドする。リミッターが外れる。  もう、こんなのもたない。   「真白さん?」  その瞬間、その夜、二度目の快楽が溢れた。 「大丈夫ですか?」  だいじょうぶじゃない。 「クッソ。だいじょうぶじゃねえよ」    波が止まらない。がまんなんてできない。  握りしめた彼女のジャージに口を寄せる。狂いそうに熱い息を閉じ込める。  熱い。  だめ。熱い。もう弾ける。  死んじゃう。  俺、オメガで童貞で処女なんだよ。最悪の組み合わせだ。 「いやだ。イキたくない」  予感がする。終わったらきっと彼女は帰ってしまう。 「行くな」  俺を捨てて行くな。    女の子のジャージを握りしめて、女の子の手の中に解き放つ。  迸る熱にどろどろと脊髄が溶けていく。  直腸に灼けるような空洞を感じる。  埋めて欲しい。  腹の中にこんな空白を抱えたまま、生きていけない。  意識を飛ばしながら奇妙なくらい幸せで、たまらなく寂しかった。
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