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前後の刺激で、もう、気が狂いそう。
冷や汗が吹き出す。
手で口を塞ごうとしたときに、自分が握りしめているものに気が付いた。
薄暗がりの水色。
ざらりとした感触。それはホテルで車椅子に乗ったときに、彼女が俺の膝にかけてくれた水色のジャージだった。
命綱みたいにずっと握り続けてた。
聴覚も嗅覚も動物的に鋭くなる。
刺激の全てが内側から自分を撫で回しているみたいだ。
ジャージから、洗剤っぽい匂いと、襟元からわずかに女の子の、リンの、肌の匂い。
くらっとする。
視界が斜めにスライドする。リミッターが外れる。
もう、こんなのもたない。
「真白さん?」
その瞬間、その夜、二度目の快楽が溢れた。
「大丈夫ですか?」
だいじょうぶじゃない。
「クッソ。だいじょうぶじゃねえよ」
波が止まらない。がまんなんてできない。
握りしめた彼女のジャージに口を寄せる。狂いそうに熱い息を閉じ込める。
熱い。
だめ。熱い。もう弾ける。
死んじゃう。
俺、オメガで童貞で処女なんだよ。最悪の組み合わせだ。
「いやだ。イキたくない」
予感がする。終わったらきっと彼女は帰ってしまう。
「行くな」
俺を捨てて行くな。
女の子のジャージを握りしめて、女の子の手の中に解き放つ。
迸る熱にどろどろと脊髄が溶けていく。
直腸に灼けるような空洞を感じる。
埋めて欲しい。
腹の中にこんな空白を抱えたまま、生きていけない。
意識を飛ばしながら奇妙なくらい幸せで、たまらなく寂しかった。
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