4.ヒート side真白

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 カーテンの無い部屋の中で目を覚ました。  曇りの日でよかった。  グレーの雲の下腹から世紀末的な朝日が差している。でも快晴よりましだったに違いない。  頭が痛い。  毛布の下でおそるおそる足を伸ばす。下肢には痛みも何もない。むしろ脚が軽く感じられる。  手で身体を探って、確かめる。  Tシャツとスウエットパンツを履いていることに気が付く。  ほぼ空っぽのクローゼットに昨夜着ていたスーツが吊されていることにも、気が付く。 「リン?!」  寝袋から飛び出す。  ワンルームのマンションに探すべきところはそれほど多くない。キッチンとトイレとバスルーム。  人の気配は無い。  何もない。誰もいない。  タイミング良く洗濯乾燥機のブザーが鳴った。  俺はこじ開ける勢いで扉を開けた。  乾きたての洗濯物は思いがけないくらい、熱い。  バスタオル、フェイスタオル、ボクサーブリーフ。  熱々の洗濯物を抱えて、俺は盛大にため息をついた。  ヒートって記憶は無くさないってことを知った。  洗濯乾燥機から出てきたバスタオルは一枚。フェイスタオルは四枚。俺の家にあるマックスの枚数。  記憶がちゃんとあるところが、いたたまれなさを倍増させる。  多分、タオルの枚数以上、イッた。  白いものを出し尽くして、最後は空イキみたいになって、苦しくて、彼女がずっと背中から抱きしめてくれてた。  背中に女の子の胸の感触があった。そこだけ、あったかかった。熱くも冷たくもなくて。  熱いタオルから身を引き剥がす。  反復横跳びみたいな勢いで寝袋のところに戻る。  毛布を持ち上げ、脇にどける。  耳の後ろからアドレナリンが湧き上がる。  目当てのそれに恐る恐る手を伸ばす。  水色のジャージは毛布の下にあった。  明るいところで見ると、水色と淡いエメラルドグリーンの中間みたいな色合いをしていた。  ジャージの胸元部分にPrince Royal Serviceと白字で刺繍が入っている。  そこに鼻を押し付ける。
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