5.エンカウント side真白

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「一昨日、真白に言ったことは本当だよ。真白ならベータでも構わないと思ってた。真白がオメガだって知ったら、もう運命だと思った」  トマの吐息が俺の唇をかすめる。  近過ぎる。  トマは、オメガに会う度にそんなこと言ってんのか?  俺のぼやきにトマは首を振った。 「こんな形でフリーのオメガの子にエンカウントするなんて、滅多にないことだよ。運命だと思わない?」  テンカウント?  ふはっとトマが笑う。  爆笑が絵になるやつって、いるんだなと思う。  俺たちの店は路面店なので、目の前の広い歩道をたくさんの人が歩いて行く。  誰もがちらちらとトマを振り返っていく。 「偶然、その相手に出会うことだよ」 「トマは偶然オメガに会ったことないわけ?」  オメガだらけの施設にいたから、そういう感覚分からない。  オメガらしくないせいで、オメガから怖がられるし、疎まれるし、散々だったけど。 「だってオメガは施設で保護されてるか、番のアルファに大事に囲われてるか、だいだいどっちかじゃない? だからマッチングパーティーって貴重だし」  トマは肩をすくめた。  言い訳するみたいに視線を巡らした。 「ほら、ああいう子なら見るけど」  トマの指差す先にオメガがいた。  明らかにオメガと分かる。  オメガの典型例のような子だ。  五月の日差しに溶けてしまいそうな白い肌。色素の薄いふわふわの髪。  白いシャツというよりブラウスみたいなトップスを着ていて、遠目からでも天使みたいな子だと分かる。  俺たちの店の前には幅が三メートルもある歩道があって、その向こうに片側二車線の車道がある。  その更に向こう側の、つまり俺たちから反対側の歩道にそのオメガは立っていた。 「エンカウント?」  俺がつぶやいたのは、そのオメガに気を取られたからじゃない。  天使なオメガを守る従者みたいに、水色のジャージの上下を着た女の子が側に寄り添っていた。  ジャージの袖をたくしあげていて、袖口から見える手首が細かったのと、長い髪を一つに結んでいたから、だから女の子だと分かった。
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