2.オメガ搬送サービス side真白

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 アルファというのは人間の最良企画の見本品みたいなものだ。 「真白はどっち?」  トマが俺の首筋に顔を近付けた。  うなじの匂いをかぐみたいに。    なんて答えたらいいんだろう。  発情しないオメガ?  一般人のベータだとはぐらかす?  それとも?  かすかな息苦しさがずっと続いている。  喉が渇いているのに目の前の水に手を伸ばすことをためらう。なぜだろう。 「真白って不思議だね。アルファにもオメガにも見える。真白がオメガなら僕は嬉しいな。僕たち運命かもしれない。そう思わない?」  運命って言葉、こんなにぽやぽやした響きだっただろうか。  押し黙る俺にさらにトマが近付く。こんなに距離近いヤツだったっけ?  そもそも通常の距離感ってものが分からない。 「俺がベータって可能性は?」  俺は、公式にも非公式にもハイスペックな男を見返す。 「擬態してるってこと? 僕は真白がベータでも構わないな。アルファに抱かれたいベータだっているよね」  香ばしい香りが強くなる。  もしかして俺は口説かれてるのか?    腰にトマの手が回される。  アルファの手。 「僕は真白を選びたい。僕を選んでよ。だってここ、そういう場でしょ。アルファとオメガがパートナーを探してる」  トマがいたずらっぽく俺の首筋に唇を付ける、真似をした。  熟れすぎたマンゴーみたいな匂いが自分の中から立ちのぼった。  喉が絞まり、下腹部が溶け落ちるような感覚。  ヒートだ、と分かった瞬間に膝から床に崩れ落ちた。  ヒートだ。疑いようがない。  雪崩みたいだ。避けられない天災みたいに圧倒される。熱に飲み込まれる。  頬に触れた床がヤスリみたいに顔面をただれさせる。熱くて痛い。痛い。 「くっそ」  なんでいまさら。なんでヒートなんて。  何度誘発剤を飲まされても一度も起こらなかったヒートがいまさら。    赤黒い視界に、トマの靴と床の間の、わずかな三角形のすき間が見えた。  アルファのせい?
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