2.オメガ搬送サービス side真白

4/8

71人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
 オメガ搬送サービスを教えられたときは鼻で笑ってた。都市伝説だろうって思ってた。  施設を出るときに、念のために用心のために、と言われて登録していたアプリを初めて使った。  左腕に着けた端末の小さな画面に水色が波紋みたいに広がり、位置情報サービスを使用します、という案内が点滅した。  ああ、これ、都市伝説だったら困るなと思った。  そこまでは、見た。    そこからは悪夢の中を這っているみたいだった。  視界が狭まって、何度暗転しても出口が見付からない。  知っているはずのトマの手や、知らないだれかの腕や声かけが、俺を沼に沈めようとしているのか、引きずり出そうとしているのか、分からない。    何度目かの暗転のあとで耳に飛び込んできたのは、その子の声だった。 「プリンスロイヤルサービスです」    涼やかな声音に、ふさがっていた喉が開く思いがした。女の声だなと、それは分かった。 「真白さんですね」  彼女はひざまずいて、俺の顔をのぞきこんだ。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加