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オメガ搬送サービスを教えられたときは鼻で笑ってた。都市伝説だろうって思ってた。
施設を出るときに、念のために用心のために、と言われて登録していたアプリを初めて使った。
左腕に着けた端末の小さな画面に水色が波紋みたいに広がり、位置情報サービスを使用します、という案内が点滅した。
ああ、これ、都市伝説だったら困るなと思った。
そこまでは、見た。
そこからは悪夢の中を這っているみたいだった。
視界が狭まって、何度暗転しても出口が見付からない。
知っているはずのトマの手や、知らないだれかの腕や声かけが、俺を沼に沈めようとしているのか、引きずり出そうとしているのか、分からない。
何度目かの暗転のあとで耳に飛び込んできたのは、その子の声だった。
「プリンスロイヤルサービスです」
涼やかな声音に、ふさがっていた喉が開く思いがした。女の声だなと、それは分かった。
「真白さんですね」
彼女はひざまずいて、俺の顔をのぞきこんだ。
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