勿体ない

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 ラーメンのスープやうどんのつゆを飲み干すべきか残すべきかと言い争うことが時にあるかと思う。飲み干す派は残すと料理人に失礼だから、残す派は飲み干すと塩分を取り過ぎてしまうからと言う。また中立派は飲み干すか残すかは個人の自由と言い、塩分を取り過ぎるからという理由で残すのは当然の理で失礼に当たらないと言う。  しかし、毎日食うなら話は別だが、偶に好きで食いに行って中には行列の仲間入りしてまで食いに行って美味しいのに残す、そんな道理はないだろう。それに失礼か否か云々は兎も角、仮令そんなに美味くなくとも私なら勿体ないと思って飲み干すことが常だ。それが道徳だと言えば大仰かもしれないが、お百姓さんが汗水垂らして作ったお米を一粒も粗末にしてはなりませんと小さい頃習ったことを金科玉条の如きに忘れない私は、そう信じてやまないのだ。  しかし、飲み干すのは卑しいとか下品に思って残す、それがスマートな食べ方とでも思っている輩が多い。つまり見栄みたいなもので食っている。大将に失礼だからと思って残さないのも体面を気にして食っている。勿体ないなんてことはからっきし問題にしていないのだ。そういうのを横目に宛ら麺が伸びる前にスープを飲んでしまえと言わんばかりに飲み干す私は、他人から見ると、ことによったら野暮天とも思われ兼ねないのである。嗚呼、不条理…。まるで奴らはそうすることがマナーかのように残す。それが常識、嗚呼、不条理…。そうして食べ物廃棄量を絶えず増やして行くのにお咎めなし。嗚呼、不条理…。
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