ポー

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ポー

 ボクの名前は高原 (アユム)。  恥ずかしいことだが、現在、ニートだ。  真面目で正直なだけが取り柄だ。  お人好しですぐに人に騙されるのがネックと言えるだろう。    地味なイケメンだが、これまでの人生で彼女が出来た試しがない。  思い通りにいかないのが人生のようだ。  今日も悪友の馬場アキラから電話があり、さんざん(からか)われた。 『ああァ、そういえばさァ。『ニート法案』が国会で通過したんだろう』 「ンううゥッ、ニート法案ねえェ」  あまり期待はしていない。これまでの政府の企画した少子高齢化対策は、ほとんど愚策と言って良いだろう。 『ポーもエントリーしたんだろう。マッチングアプリに?』  カレはボクの事をポーと呼んだ。 「まァな。首尾よく結婚できたら、国家公務員と同じ待遇らしいから」  (うた)い文句だけは立派だ。  二十一世紀に入り日本は結婚率は右肩下がりだ。当然ながら出生者数も激減だ。  今回のニート結婚法案も政府の苦肉の策と言って良いだろう。  少しでも結婚する男女を増やそうと躍起になっているようだ。 『ごきげんじゃん。ニートが日本を救うんだからさァ!』 「フフッ、そんな夢みたいな事があるかよ。宝くじと同じなんだからさァ。どうせマッチングアプリに登録したって、当たりはしないよォ」  ボクは生まれつき運が悪い。  今は結婚した同級生のカレンも中学時代、ボクの事が好きだったらしい。  この前の同窓会で告白された。  ところが鈍感なボクは気づかずにスルーしてしまった。  真面目なのも考えものだ。
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