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「……美愛?」
中庭に座っていると、頭上か聞きなれた愛しい彼の声。
「ちょ、美愛泣いてる!?」
顔を上げたあたしにハラハラと落ち着かない様子であたしの隣に腰をかける。
「……新太のバカ」
「ん?」
「なんであたし以外に可愛いって思うの?」
「え?美愛以外に思ったことないんだけど」
そんな新太は本当にきょとんとしている。
「さっき言ったじゃん、可愛いんじゃないって」
「あー、いつも適当に相槌打ってるから覚えてないなぁ」
新太は本当に覚えてないようで、首を傾げる。
「適当?」
「うん、適当。オウム返ししたり。記憶なんもないけど、可愛いとか聞かれたんだろうね」
「うん、聞かれてた」
「俺、美愛以外の女の子に全く興味ないよ。毎日集まられて抜け出せないし、美愛とこいけないし迷惑だけど面倒だからそのままにしといてる。でも、美愛が嫌なら全部やめさせるよ」
「……新太」
「でもさ、美愛ももう巻いてくるのやめて」
「……え?」
可愛くなかったのかな。似合わないのかなって不安になる。
「新堀に可愛いって言われてたろ」
「新堀くんは誰にでも言うよ」
「だけど、俺が嫌なの。だから、俺と2人のときにとびっきり可愛い美愛を見せてよ。あとただでさえ早起きなのにこれ以上早起きするのも心配。今日めっちゃ眠そうだし。巻くために早起きしたんでしょ?」
「バレてる……」
「俺、美愛が思ってる以上に美愛のこと好きだし、よく見てるからね」
「新太……大好き」
あたしに向かって腕を広げる新太に飛び込む。
どうやらあたしの心配は杞憂で、彼はあたしだけの王子様だったようでした。
-Fin-
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