あたしだけの王子様

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いままでの新太は野球部で、髪の毛を坊主にしていた。 で、いまは3年で部活も引退しているから髪の毛も伸ばしてるらしい。 いっそのこと「坊主にしてよ」って言ってしまいたい。 「あー、授業はじまっちゃう。またあの教室に戻らないと……」 正直いまは同じクラスであることが嫌だ。 休み時間の度に彼のまわりには女の子だらけになっていて。 「あたしも負けないくらい可愛くしないとダメかな」 新太に他に目を向けてほしくない。 少しでもあたしがいいって可愛いって思って欲しい。 「髪の毛巻くとか?そうするだけでもだいぶ変わるんじゃないかな。まぁ、そのままでも美愛は可愛いけどね」 「ありがと。明日から巻いてみるよ」 朝、時間がなくていつも髪の毛はひとつに結ぶだけだ。 でも、新太のまわりの女の子はみんな朝から頑張ってる。 だから、あたしも早起きして少しでも可愛いって思ってもらいたい。 いままではお弁当をつくるだけで精いっぱいだったけど、さらに早起きするとなると……5時起きかな。 「美愛、帰ろう」 今日ははやく寝ないと……なんて考えてたら、放課後になっていたようで新太があたしの隣にたっていた。 「え、もう放課後!?」 自分を可愛くする計画をたてていたら、群がる女の子のことも気になっていなかったようで、授業がおわっていた。 「何考えてたらそんな時間過ぎてくんだよ」 面白そうに笑って「ほら、帰るよ」って言う。 この笑顔が大好きで、ずっとあたしだけの笑顔であって欲しいって思う。
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