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輝き
18歳、芸歴4年目
仕事という仕事は、ほぼない。
この仕事をしようと思ったキッカケも、俺を女手一つで育ててくれた母の助けになれるかも、手っ取り早く稼げるかも。
そんな軽くて不純な動機でしかない。
ドラマの仕事を貰っても、ホントの端役。
当たり前だ。
なんのスキルもない、役者に興味があるかと聞かれても、そうでもない。
きっと周りにそんな気持ちは見透かされているんだろう。
「顔は良いんだけどね。」
何度そんな事を言われたか。
かといってモデルに重点をおいた活動をしようと思っても、やる気の差というのは顕著に出るんだろう。
稼げれば何でも良い俺は、どうしてもこの仕事をやりたいと、熱と気持ちを持つ人間にはどうやったって敵わない。
何をやっても半端な俺。
そろそろ先の事をちゃんと考えないといけないんだろう
「よっ、ヒカル。今日も相変わらず見目麗しいな」
からかうように俺の顔を覗き込んでくるのはプロデューサーの長谷川さん。
俺がこの世界に入ってから何故かずっと気に掛けてくれている唯一の人だ。
俺がこの世界を辞めようとするタイミングで、必ず何かしらの仕事に俺の名前を入れてくるというエスパーのような人だ。
「お前はいつか絶対にスターになるよ」
出会った頃に長谷川さんにそう言われた事は鮮明に覚えてる。
「なぁヒカル、歌、歌わないか?いや、CDとかじゃないんだけど、いまやってる番組のミニコーナーで毎回色んな芸能人が1曲歌うんだけどさ、お前楽器出来ただろ?弾き語りっての?してくれないか?」
「…やる。」
大して悩みもせず返事をした俺に笑って
「相変わらず選り好みしねえな。いつか、抱えきれなくなる位オファーがきたときの為にちゃんと考えて仕事受けるクセをつけとけよ?」
長谷川さんは本当に俺が売れると思っているらしい。
「じゃあ、やりたい曲も使う楽器もお前に任せるからな。良く考えろよ?」
詳しくはまた連絡するから。なんて言いながら去っていく背中を見つめながら
長谷川さんに下手な演奏は聴かせられないな、なんて思った。
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