輝き2

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輝き2

「長谷川さん、このコーナー、人気のある人がたくさん出てるよ?」 先日長谷川さんから貰った歌のコーナーの仕事。その打ち合わせに来ている。 会議室に来た長谷川さんに開口一番そう言ったら 「おっ、珍しく事前に番組調べたのか。」 偉いな、なんて笑ってるけど 「笑ってる場合じゃないよ。」 どこの誰だか分からないようなヤツがやって良いコーナーじゃないと思う。 長谷川さんの番組は、普段テレビを観ない俺でも知っているゴールデンタイムの情報番組だった。 「俺、出れないと思う」 先週放送してた回に歌っていたのは、海外のコレクションに出た有名なモデルだった 「名も知れない俺が出るなんて、そもそも企画が通らないと思う。」 そう言ったら長谷川さんと一緒に居たスタッフさんたちがクスクス笑い出した なんだ?と不思議に思っていたら長谷川さんは大袈裟に椅子にふんぞり返って 「企画もなにも。俺の番組だし。もうコレ決定してるし」 もしかして 「長谷川さんって偉い人なの?」 今度こそ、長谷川さんとスタッフさんが一緒になって笑い出した 「長谷川さんはウチの局の看板プロデューサーです」 「どーもー、看板でーす」 なんて言って笑ってる。 「知らなかった…」 長谷川さんは 「お前はそのままで居てくれ。必ず俺たちがお前を引っ張り上げるから」 「何も無い俺をそんなに信頼しちゃって良いの?売れないかもしれないよ?」 そんな事を言った俺に 「俺の目は絶対に見誤らない。お前の事務所も俺も、絶対にお前が売れる時がくると思ってる。理由なんか訊くなよ?直感だから。でも俺の直感は外れない」 なんか、胸がギュッと締め付けられるような気持ちになった。 長谷川さんの期待に応えたい。 ただ、そう思った。 「…頑張りたい。」 そう言った俺に 「収録は2か月後。楽しみにしてる。」 長谷川さんは右手を差し出してきた その手をそっと握り返して頷いた。 ────── 収録まで2か月 俺は事務所のスタジオに毎日通っていた。 ウチの事務所の社長と長谷川さんは昔からの友人で、話は全て社長に伝わっていた。 「このスタジオ、収録までヒカルが使って良いから思う存分練習しな。」 社長も俺を信じてくれている1人だった。 ピアノにするか、ギターにするか。 曲は? 収録が決まってからすぐに社長に相談をした。 社長は放送される画を想像して ピアノで、曲はこれ とすぐに決まった。 そうしたら、あとは俺の練習だけだ。 毎日、毎日。練習。 たまに仕事。そしてまた練習。 いくらか形になってきた頃に、演奏風景をビデオに撮ってもらった。 録画を観て、愕然とする。 ピアノは幼い頃からやっていたので問題はないと思う。 歌も、悪くはないはずだ。 何が悪いって。 顔だ。 違う。顔、というより表情と言えばいいのか。 人形のように、終始変わらない表情。 何も伝わってこない、無表情 今度は少し笑顔を意識して、もう一度撮ってもらう。 今度はただ少し微笑んだ人形。 どうして。 何がいけないのか。違う表情を作れば良いのか? 表情ばかり気になって、歌が疎かになる。 負のループに落ちていく
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