戦火再演

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「その手を離すアル!」 「動くな!? この女がどうなってもいいのか?」 階段を上がるとポメラが人質にされていた。 おそらく魔法を行使するため、メイメイとリャムから離れた隙を狙われたのかも。 他には誰もおらず、連邦兵はひとりきり。 だが、ちょっと間抜け過ぎると思う。 メイメイ達の方を見ているが、背後に立っている自分に気が付いていない。 後ろから持っていた短剣を奪い、直剣(グラディウス)の柄で殴って気絶させた。 顔を見ると、例のポペイでトネルダが怪しいと証言した男。 ということは、やはり、ここに攫われた人達が囚われているはず。 リャムが男の手足に短い縄を当てると、勝手にきつく縛り上げていく。 これも魔導具のひとつなんだろうか? 「……サオン」 「うん?」 拘束具を見つつも周囲を警戒していると、ポメラが自分の名を呼んだ。 顔が赤くなっている……首を絞められて苦しかったのかも。 「ありがとう」 「いや、お互い様だから」 お礼を言われることなんてしていない。 「一個借りてあげる」 「え? うん、わかった」 ちょっと何を言っているかが、よくわからなかった。 貸しを作った形なんだろうが、彼女の気が済むのなら好きにしたらいい。 階段を下りて大広間を抜けると、通路があり、横に牢屋がある。 牢屋の中は(から)で扉が乱暴に開け放たれたままなので、急いでいたとみられる。 その通路を急いで前に進む。 角を曲がったところで、目隠しされて鎖に繋がれた人たちを発見した。 「くそっ、お前たち、()れッ!?」 鎖を握って先頭にいる隊長格らしき男が命令する。 だが、向かってきた兵士を10秒も経たないうちに倒した。 呻き声とともに隊長格の男が鎖を離す。 黒腕ジルから回収した籠手がうまく使えた。 右肩を貫通したようで、流れ出す血を左手で押さえている。 「リャム」 「わかりました」 隊長格の男を自分が殴って気絶させると、メイメイがリャムにここを任せた。 今は一刻もはやく魔導船、緋雷零式の下へ辿りつかなければならない。 もし、船を持ち去られたらホン皇国として相当な痛手だろう。 ぐるりと周遊できる場所に出た。 自分達を見て、連邦兵が魔導船に繋げていた縄梯子を切り落とした。 でも大丈夫。 船が動き出す前にポメラの魔法が完成した。 氷の階段。 氷でできているが、不思議と滑らない。 氷の階段を使って魔導船に乗り込む。 自分とメイで船に残っていた残りの工作員を倒していく。 向かってくるものを容赦なく斬り捨てる自分に対して、メイメイは違う。 四角い箱から色付きの液体を飛ばしている。 それに触れると麻痺や昏睡状態になるらしい。 船を制圧した自分達は魔導船に救助した13人や捕えた連邦兵を乗せた。 島を裏側から出て、表に回り、亡くなった兵士を回収した。 勝てるには勝てたが、本当は犠牲を出さずに済んだ戦いだった……。 皆、浮かれることなく暗い雰囲気のまま、ポペイの街へと戻る。 帰りの船の中。 「サオンくぅーん!」 やけに甘い声で自分の名を呼ぶメイメイ。 なんか一人だけやけに機嫌が良い……。 「その剣と左肩の赤い腕は何アルかな~?」 マズい、バレた……。
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