孤城落日

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「この中で魔法使いや戦えるものはいるか?」 この大陸で一番カラダの大きい獣人族(テラノイド)獣種巨象人(トゥスカー)の男。 身長はざっと見て2M(メトル)半ほどある。 キサ王国王都テジンケリが陥落して1か月が経った。 今いるのはジューヴォ共和国の首都クレイビアにほど近い場所。 ここにキサ王国から流れてきた難民をまとめて受け入れている。 首都には入れてもらえない。 だが、定期的に食料や水、粗末だが大量のボロ切れを提供してくれた。 治安はそれほど悪くない。 と言うのも正直、キサ王国よりしっかりと食事が取れているから。 多少の言い争いとかは、たまに起きる。 しかし、窃盗や傷害事件は今のところ起きていない。 そんな中でのジューヴォ共和国からの任意による志願型徴兵。 誰も進んで手を挙げるものはいなかった。 すると巨象人の戦士が、付け加えて言った。 「報酬はひとり白金貨1枚だ」 白金貨を!? それだけあれば、節約すれば数年くらいは仕事をせずに暮らせる。 「よし、そこのふたり、こっちへ来い」 手を挙げたのは、ふたりの女性。 ひとりは魔導ローブ、もうひとりは聖職者の衣を纏っている。 他にも戦士風の男と盗賊っぽい男が前に進み出た。 「他にはいないか?」 どうしよう?  何をするのか知らされていない。 誰も徴兵されて何をするのか質問さえしようとしない。 でも正直、金は欲しい。 今は避難所に隔離されている だが、いずれ国民として受け入れてくれるかもしれない。 その時に金は持っていた方がいいに決まっている。 たとえ、共和国が受け入れてくれなくてもどこかで使える。 「よし、おまえで最後だ。ついて来い」 手を挙げたら、指を差された。 すぐに身支度をする。 支度といっても、配給された服や布だけ。 腰帯袋(オモニエル)に詰めて、すぐに避難所を出た。 「サオン、この国に居たの?」 「これはカルテア様」 天幕に通される。 中にはキサ王国王女カルテアと護衛騎士ダンヴィルがいた。 「その者は?」 赤毛の獣人族獅子人(レオネフ)の老人が問う。 奥に座っていて、チラリと自分に視線をやった。 その鋭い眼光に射竦められ、身体がぎこちなくなる。 「命の恩人です。シンバ将軍」 シンバ将軍という名は聞いたことがある。 ジューヴォ共和国の守護神、常勝将軍などと複数の異名をもつ。 大陸中にその名が知れ渡っている有名人であり、重要人物。 ひとたび彼が戦場へ現れると敵国の兵士は悪夢にうなされるという。 「すこしは心得があるようだな……その者でよいか?」 「ええ、彼は信用できます」 「そうか、では他の者は外で待っていろ」 自分以外の志願者は全員、外で待機を命じられた。 他の皆が出ていくと、巨象人(トゥスカー)の大男が説明を始めた。 「西にあるゲイドル火山を活性化してきてもらいたい」 ゲイドル火山というのは、レッドテラ帝国南東にある独峰の山。 でも、約50年前を最後に噴火は収まっていると聞いているが。
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