孤城落日

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「制御者を倒すのが、おまえ達の任務となる」 巨象人が説明を続ける。 火山を祈祷術のようなもので制御している人間がいるそうだ。 その者を倒せば火山は数日もしないうちに活動が始まるという。 「それはつまり同盟を結ぶということですか?」 ゲイドル火山の活性化は、ジューヴォ共和国にとっては福音の鐘。 まず帝国が自国領からこの国へ手出しができなくなる。 するとジューヴォ・キサ両国がキサ王国奪還がしやすくなる。 「なかなか聡い若者よ、だがすこし違う」 巨象人に代わりシンバ将軍が口をひらく。 現在、キサ王国は王女カルテアのみが自由の身となっている。 国王や王妃、2人の王子の身柄は既にレッドテラ帝国にあるという。 カルテア王女以外の王族はキューロビア連邦へ亡命したそうだ。 だが、連邦は帝国と取引を終えていた。 そのため彼らは捕まり、すぐ帝国へ移送されたとのこと。 まもなく処刑される予定で、王族を根絶やしにして初めて終戦となる。 「ここにいるカルテア王女はおそらく唯一の生き残りとなろう」 それはすなわち、次期国王の最有力候補であることを意味する。 もちろんキサ王国自体が息を吹き返せば、の話。 「だが、その存在は国民に隠されていた」 カルテア王女は、現国王の娘ではない。 先代国王の庶子……寵妾の子であるそうだ。 母親はすでにこの世になく、母親の縁戚を転々としていたそうだ。 そんな中で先代国王が見つけ、王宮へ拾われた。 だが、先代国王はその翌年に崩御してしまった。 そして現国王に疎まれたカルテアは城の尖塔へと幽閉された。 「だから、血筋の正統性を自らの手で証明しなければならない」 シンバ将軍が、周囲が慄くほどの岩壁を打ち砕く視線で王女を正視する。 それに対して王女は、常人では気を失ってしまいそうな視線を正面から受け止める。 「これだ。王女は現国王の器の比ではない!」 シンバ将軍は先ほどまでの威迫めいた気配を消して、微笑で唇を歪ませた。 まずキサ王国として暫定臨時国家を立ち上げないといけない。 そのためにはそれに見合う十分な実績が必要となる。 そしてもっとも重要なのは共和国側へのお土産。 無償で、他国へ力を貸すわけにいかないから国民を説得する材料が欲しい。 つまり火山を活性化させて、帝国からの侵攻という脅威を取り払うこと。 この要件を満たして初めてジューヴォ共和国は手を組むそうだ。 「だが、カルテア王女は行かせられん!」 本人は参加を強く希望しているが、危険すぎると周りが引き止めている。 「そこでキサ国の勇士に行ってもらうことにした」 それが自分たち志願部隊の任務。 だが、任務の内容、目的地は他の者に話さないよう命令された。 任務が失敗した場合、情報が漏洩しないようにという保険。 他の者が捕まり、拷問を受けても自分が自害してしまえば漏れない。 小瓶を渡された。 これを口に含めば、たちまちの内に命を落とすという。
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