凶漢叛徒

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ここは……。 レッドテラ帝国の国境を抜けたすぐのところ。 海岸沿いに大きな目印の岩が見えるので間違いない。 ここからしばらく進むと、前回の罠があった場所へ着く。 「一度、休憩を取ろう」 「こんな危ないところで休憩? おいおい、勘弁してくれよ」 ジェイドに文句を言われる。 まあ、ご指摘はごもっともだと思う。 でも、どうしても今の内に確認しておきたいことがある。 これまで隊列を斥候ができる盗賊のジェイドが先頭。 次に自分、3番目にリードマン姉妹、最後列がビラルクだった。 普通に考えたら、これが一番バランスの取れた順番となる。 だけど、前回の一件で危険人物だと分かったビラルクがいる。 なにを考えているのかわからない。 わかっているのはセレを襲い、人に唾を吐く危ない奴だということ。 だから、どうしても今の内にこの男の本性を暴かないといけない。 休憩中もチラチラとポメラとセレを盗み見している。 迂闊だった。 こんなに危ない奴なのに気づかなかったなんて……。 「ちょっと方角を確認したいので、お願いします」 ジェイドとポメラに手伝って欲しいと頼む。 海岸そばの岩場があるが、かなり急なので自力で登るのは困難。 ジェイドは周囲を警戒して、ポメラが氷魔法で階段を造った。 岩場に登って、屈んで地図を見ているフリをする。 その直後、森の中から炎の柱が上がった。 やっぱり……。 「アンタ、妹に手を出そうとするなんてどういうつもり?」 「……」 駆けつけると、ポメラが杖をビラルクに突きつけている。 氷の魔法で階段状に作ってもらった直後。 ビラルクの挙動が怪しいので、すぐに引き返すよう頼んでおいた。 周囲が騒がしくなってきた。 たぶんというか確実に見つかってしまった。 「おまえらは……」 普段開かないビラルクの口が大きく開く。 そこから茶色がかった不気味な歯を覗かせた。 「ここで死ぬ運命にあるのだ!」 くそっ、間者(スパイ)だったか!? ビラルクが手袋を外し、片手をあげた。 するとビラルクを追い越し、帝国兵が自分たちを取り囲んだ。 すぐに戦闘に突入し、ひとり奮闘する。 訓練された兵だけあって、一人ひとりが手強いが4人も倒せた。 だが、ジェイドがやられ、ポメラ、セレと順に倒れていく。 最後に残ったひとりなので、捕まれば尋問が待ち受けている。 すばやく服毒して、再開することにした。
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