凶漢叛徒

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「その巫女殿に会えますか?」 「それはできません、この吊り橋は誰も渡ってはいけないのです」 誰も?  じゃあ、その巫女という人物はどうやって生活しているんだろう。 「少し失礼します」 案内人コヨエパはそう言うと、索道に持ってきた荷物を吊り下げた。 その索道を引っ張っていくと、小屋の方まで荷物が運ばれていった。 カランカラン、と手元にある鐘を鳴らすと小屋の中から人が出てきた。 これは……。 女性、かなり若い。 下手したら、10代半ばぐらいかもしれない。 別にそれは今はどうでもいい。 問題なのは、もの凄く痩せ細っているという点だ。 「今、渡した荷物って、1週間分の食事ですか?」 「いえ、1か月分ですが」 腕組みしてその上に乗せられるくらいの食糧。 1カ月や2カ月くらいなら何とかなるかもしれない。 だが……。 「彼女はここから出たことは?」 「7年前に来てから1度も出ておりませんが、それがなにか?」 細い腕で、食料を回収している。 でも、こちらをチラリとも見ようとしない。 「こんなヒドイことをして許されると思っ……て、あれ?」 めまいがする。 何とか耐えているが、そう時間もかからず気を失ってしまいそう。 「ようやく効いてきましたか」 なにか盛られた? そういえば、ここへ登ってくる途中、差し出された水を飲んだ。 「あなたは大事な人柱となるのです」 年に1回、火山を鎮めるために生贄を捧げているそうだ。 ちょうど、都合よくやってきたよそ者。 生贄として白羽の矢が立ってしまったらしい。 くそっ、始めからその心算(つもり)でここへ連れてきたのか? 「ご心配に及びません、お連れの方々も直に運ばれてきますから」 3人とも、眠り薬を盛られたはずだという。 今ごろ、縛られた状態で担がれて、この火口へ向かっていると話す。 火口の底部分の岩肌はとても薄いそうだ。 ちょっとした刺激でもすぐに割れてしまうとのこと。 生贄を放り込んだら、火口が開き、生贄を飲み込むという。 「もう少しお待ちください、一緒に神へ捧げますから」 それが最後に聞こえた言葉だった。 274回目。 「おい、どうした? ぼーっとして」 ここは……山に登る日の朝。 ジェイド、ポメラ、セレの3人が揃って食卓を囲んでいる。 長老の屋敷の離れで食事をしていた。 「あ……うん、大丈夫」 「変なヤツだな、おまえは」 大丈夫、ここからの再開ならまだ助かる可能性がある。 もし、再開が山の中腹とかからだったら、ヤバかった。 自分はなんとかなるかもしれないが、3人は確実に死んでいた。 これからどうするかを決める前にひとつ気が付いたことがある。 死に戻りは1日単位、それも朝に戻っているのではないだろうか? レッドテラ軍との戦いでも、王都テジンケリでもそうだった。 もし、本当にそうなら運が悪い場合は覆せない状況も起こり得る? 何度再開できても、無理な展開が起きる可能性がある。 例えば仲間が殺された後の状態で再開したとしたら……。
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