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「それにしても王女様は、とても面倒な任務を寄こしやがったな」
「まったくですわ」
え……。
「カロ、カリ……じゃなくて、王女様の名前なんだっけ?」
「カルテア様ですわ」
「そうそうカルテア様! ところでなんでお前がそれを知っている?」
「──ッ!?」
朝食を食べ終わって、海岸線を歩いてしばらく経った頃だった。
ジェイドの愚痴にポメラも同調した。
すると、ジェイドの口調が急に変わった。
たしかに……。
なぜポメラは、王女カルテアの存在を知っている?
ジューヴォ共和国の避難場所の天幕では、名前しか聞かなかったはず。
自分は話してないし、王女の存在は一部の者しか知らされていない。
「なっ、なにを言ってるのよ、そんなの見たらわかるじゃない!」
「どこを見て、そう思った?」
「高貴そうな服と見た目をしてたじゃない」
「それはおかしいな」
カルテア王女は、会議の際、避難民に紛れるため変装をしていた。
下女の服を身に着け、顔には煤をつけ「偽装」していた。
ところで、なぜそこまでジェイドが知っているのか?
そちらも気になったが、先に行動を移したのは、ポメラだった。
「根源よ、柔らかい紫焔の渦となりて……」
いきなり詠唱を始めた。
ジェイドが短剣をポメラに投げつける。
だが、妹のセレが身体を張って短剣を止め、口から血を吹いて倒れた。
「【紫哭火槍】」
3本の炎でできた槍。
その内の1本は短剣を拾おうと近づいたジェイドに額に刺さる。
そして残りの2本はニウの盾となった自分を貫いた。
284回目は、朝起きて朝食をとっているところからだった。
先ほどの件でハッキリした。
ジェイドの方は理由は不明だが、こちらの事情を知っている。
その上で、協力的な姿勢をみせた。
一方、リードマン姉妹は、敵対勢力だと見た方がいい。
ジェイドが気がつかなかったら、全員、殺られていたかも。
ただこの時点ではジェイドは不審に思っていても確証を得ていない。
かと言って、確証を得た後にやりあったら、先ほどと同じ結果になる。
それと、ふたりを倒すのはどうも後味が悪い。
戦わずにふたりを遠ざけられたらそれでいい。
「君たちふたりは、ここで待機していて欲しい」
理由は極秘で教えられない。だが重要な役割だと伝える。
「待機するのは私だけで十分です」
「いや、ダメだ。君たちふたりが一緒じゃないと成功しない」
嘘の中の真実。
真面目な顔して、嘘を吐く。
ふたりが一緒じゃないと、逃げられない。
だからある意味、本当のことを話している。
夕方までに戻るという説明した。
その上で北側……ゲイドル山の方へ向かって歩き出した。
北に進路を変えたのは、リードマン姉妹を混乱させるため。
本当はまっすぐ東へ進みたい。
これで、追ってこなければよいのだが……。
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