死地行軍

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先ほどはうまくいったのにまさか林の中に弓兵が潜んでいたなんて。 完全に意表をつかれて、やられてしまった。 だが、その次も矢が飛んで来ると知っていたのに結果は同じだった。 正面の笑っている男は2回に1回は倒せるようになった。 でも、右に逃げたら囲まれて、左に逃げたら、矢で蜂の巣にされる。 232回目。 やはり、右より左の方が生き残る道が残されている。 笑う男を倒し、剣を奪うと左へと斬り進む。 途中で小盾を持っている敵兵士に気がついたので、倒して奪った。 戦線を左側へ離脱した後、敵側寄りに斜めに走る。 敵歩兵が数人、気が付いて追いかけてきた。 相手は皮の鎧を着ていて、こちらより重そうに走っている。 軽く振り切れるが、ここはあえて追いつかれないくらいの速度で走る。 やっぱり矢が飛んでこない。 予想した通りだった。 理由はいくつかあると思うが、まず味方への誤射の可能性を気にしている。 次に弓隊が隠れている場所を知っていたので、離れた場所へ移動した。 そして、複数人が追いかけているので、問題ないだろうという憶測。 この3つが揃っているから、射かけてこないのだと思う。 追いついてしまえば、逃げた兵ひとりなど造作もない。 そう考え、油断していることだろう。 でも実際は、林の中へ逃げ込むと振り返り、追ってきた3人と向き合う。 あの笑っている兵士のおかげで、ずいぶんと腕をあげた。 多少は苦戦したが、林の中ということもあって地形が味方してくれた。 木々をうまく利用して、囲まれないよう気をつけながら一人ずつ倒していった。 追っ手がいないことに安堵して油断してしまった。 いきなり矢が数本、顔や身体をかすめた。 あわてて丸い小盾で頭部を隠したまま、木のうしろへ飛び込む。 敵軍の弓隊が何人かこっちに来た。 枝葉を踏む音が徐々にこちらへ近づいてくる。 そのまま何もせず、木の裏に隠れていたら、じきに囲まれてしまう。 何人いるのか、音だけでは正確な場所もわからない。 ここで待機するのは自殺行為だ。 矢が飛んできた方向の反対側へ向かって走りだす。 くっ……。 矢を1本、太ももに貰った。 膝をついて矢を引き抜くと、血がたくさん流れ出てしまう。 罠で身動きが取れなくなった獲物を仕留めるように近づいてくる。 生い茂った草むらの中から矢が飛んできて、命を落とした。 この林の中へ逃げ込めるのは3回に1回くらい。 そして、弓兵から逃げおおせたのは20回中、1度だけ。 その1回も背中に受けた矢傷が原因で、暗くなる前に死んでしまった。 小盾は敵兵から奪ったものがあるが、矢を受けるにはあまりにも小さすぎる。 もっと身体を隠せるものがあればいいのだが……。 そう考えていたら、ひとつ使えそうな良い案を思いついた。 これならうまく行くかも!
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