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「それでは準備次第、出発します」
「待ってください!」
トネルダ隊長の発言に待ったをかける。
「赤い光を放つ巨大な筒に心当たりはありますか?」
「魔導砲アルね、ホン皇国の魔導兵器のひとつアル」
あれが魔導兵器……。
途方もない威力。
あれは人が太刀打ちできるような代物ではない。
ヤオヤオ皇女に訊ねたが、メイメイが返事をした。
「もし、船にその大砲がついていたら……」
「なぜ、それをあなたが知っているのかしら~?」
「……昨日、夢で見ました」
今度はヤオヤオ皇女が返事をした。
だが、目にうっすらと猜疑の光が宿る。
かなり苦しい言い訳だけど、この場ではっきりさせておいた方が良い。
「たぶん、パイチーのヤツが盗まれた船あるね」
「メイメイ~?」
「大丈夫アル、こんなことで揺らぐようなホン皇国ではないアル」
それだけ自分達の国力に自信があるのだろう。
堂々と兵器の正体を教えてくれた。
船の名前は「緋雷零式」。
両舷を鋼板で補強し、舳先近くに魔導砲という大砲を搭載した海上兵器。
研究の資金繰りに困ったメイメイが、借金の形に取り上げられた魔導船の設計図。
取り上げたのは、異母にあたるメイメイより2歳年上の第8皇子。
きょうだいの中でもっとも嫌われていて、悪い噂の絶えない奸智に長けた人物。
そのパイチ―皇子が、魔導船を造ったと発表したのが半年前。
メイメイが設計した話は公表しておらず、すべて自分の手柄にしたそうだ。
だが、皇王から皇都に献上するよう言われると翌日には盗まれたと報告したそうだ。
「本当に盗まれたかも怪しいものですわ~」
「それを海賊が持っている夢を見たアルか?」
「うん、まあ……」
正直、前回は海賊は出てこなかったが、繋がりはあるのだろう。
もし、海賊が魔導船を所有しているなら、近づくのは危ない。
「それが本当なら、島の裏側に回るのは危険だと思います」
トネルダ中隊長から同様の意見が出た。
忌まわしげに話しているので、代替案には納得していなさそう。
島の裏側には回らず、正面から小舟で上陸する。
船に積載できる小舟は2艘。
1艘に4人までしか乗れないので1度に8人しか上陸できない。
何往復もすれば、兵士たちを大勢、送り込むことは可能、
だが、当然、監視の目があるはず。
必要な人数を上陸させられるかが怪しい。
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