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「最初の舟に乗せてください」
「正直、俺はお前を疑っている」
トネルダ中隊長の代替案はその後、第2皇女に承認された。
骸骨島に近づいてきたので、トネルダ中隊長の下へ訪れた。
島への上陸する最初の面子に加えて欲しいと頼んだがダメだった。
夢で見たからという理由で作戦を捻じ曲げた余所者に不快感を露わにしている。
「これ以上、根拠のない意見は受け入れられない」
先発はとても危険だ。
敵が大勢出てきた時に彼らだけで、乗り切れるだろうか?
「ですが……」
「サオン君、待つアル」
食い下がろうとしたが、メイメイに肩を叩かれ、首を横に振られた。
彼らに任せろってことか。
しばらくして準備が整ったようだ。
トネルダ中隊長率いる兵士の中から特に腕の立つものが集められ、小舟に乗船する。
「先ほどサオン君が言ったのは、たぶん当たっているアル」
「なら、どうして?」
「彼らにも矜持があるネ!」
皇国を自分達の手で守っているという誇りと自負。
他国の者が易々とそれを踏みにじってはならないのだと……。
小舟が砂浜に着くと膝下くらいまで浸かったまま、上陸した。
──やっぱり。
森の中に敵が潜んでいた。
少数だとわかり、森から飛び出し、トネルダ中隊長たちを襲い始めた。
小舟は6人を砂浜に残し、引き返し始めたが、数が違い過ぎる。
しかも敵はただの海賊ではない。
訓練された者の動き。
遠目からでも分が悪いのは明らか。
「サオン君、さっきの話の続きアル」
「え?」
なにかを背負わされた。
カチャカチャと工具の音が聞こえる。
メイメイが自分の背中の方で何か作業をしながら話を続ける。
「信頼というのは、言葉だけでは、なかなか得難いものアルヨ」
それはまあそうだと思う。
口だけでは何とでも言えるから。
「だから行動で示して勝ち得ることをお勧めするアル」
とても良い言葉を聞けた。
まさしくその通りだと思う。
しかし……。
「それで、これは?」
「人間噴射推進器……人間ロケットと名付けようと思うアル」
いや、名前の話なんて聞いてないんだけど?
「この操縦桿を握るアル」
金属の棒が左右にあり、右が方向、左が上下に移動するためのものだそう。
「その突起を押すアル」
言われるがままに押した。
背後でぶしゅーっと音を立てると身体が宙に浮いた。
「1分しか持たないから、早く行くアル」
右の操縦桿を前に倒すと前進した。
そのまま、島へとゆらゆらと覚束ない飛行のまま辿り着く。
自分が砂浜に着地した頃には、トネルダ中隊長以外は全員やられていた。
「よせ! 降りてくるな、お前まで死ぬぞ!?」
空からやってきた自分に正体不明の敵が殺到する。
トネルダ隊長が声を振り絞るが、燃料が切れたので引き返すこともできない。
だけど、トネルダ中隊長の発言には、ひとつ重大な誤りがある。
「ぐべぇ!」
聞こえたのは、正体不明の男達の断末魔。
どんなに訓練された者達だろうが、今の自分の相手は務まらない。
遅い、鈍い、緩い……。
5人同時に自分へ向かって剣を振るうが、話にもならない。
剣の速さは、手で叩き落とせるくらい遅い。
こちらが動き始めてから、ようやく反応する鈍さ。
そして、自分を囲い込むにはあまりにも包囲網が緩すぎた。
直剣で剣を1本叩き折って、その隣の男を斬り捨てる。
背後から迫る男の背中に身体を捻りながら回り込み、背中を斬りつける。
斬りつけた男の背中を押して、向かってくる者にぶつけて倒す。
その間に近づいてきた男を剣を交わすまでもなく喉を貫き通す。
そして、絶命した者を横に押しのけようと藻掻いている男の首を狩り終えた。
最初に剣を折られた男が背を向けているので、「黒腕」を試す。
左手人差し指に金属の玉を乗せ、親指で弾く。
火花が走ったが、背を向けている男の隣にある木に穴が開いた。
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