戦火再演

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砂浜に残っていた連中を片付けた。 15人倒すのに1分もいらなかった。 3人ほど逃げられたので、一刻も早く追いかけたい。 だが、トネルダ中隊長の怪我が思ったよりひどい。 応急処置をしている間にセレを乗せた小舟が戻ってきた。 「サオン殿」 「はい?」 「すまなかった」 キサ王国の戦士を疑い、かつ過小評価してしまったことを謝罪してきた。 自分にあやまられても困る。 あやまるなら、亡くなった彼の部下に頭を下げるべきだ。 3回目の小舟でメイメイ、リャム、ポメラが揃った。 「はやく行くアル」 「え、でも……」 兵達の数はまだ少ない。 この先にどれだけ敵がいるかわからないのに……。 「海賊じゃなかったアル」 メイメイが、背中の巨大な背嚢から武器らしきものを取り出す。 取っ手が何個もあり、細長い箱のような不思議な形をしている。 海賊じゃなければ連中は何者なのか? メイメイに聞こうとしたら、リャムが答えた。 「おそらくキューロビア連邦の工作員です」 キューロビア連邦と言えば、人質を取って外交交渉に使うような卑劣な国。 だから、こんなホン皇国の南端まで侵入してきた? 目的は金持ちや貴族を攫って身代金を要求するつもりかもしれない……。 「海賊じゃないなら十中八九無事ネ! ただし……」 どちらにせよ人質は生かしておく必要がある。 だから今は無事のはず、とメイメイは答えるが、その表情はいつになく硬い。 時間が経てば経つほど、魔導船「緋雷零式」で逃げられる可能性が高い。 セレを残して、人質を奪還するべくメイメイ達と4人で先を急ぐ。 森の中へ入ると、まっすぐにある方向を目指す。 機転を利かせたポメラが、例の単眼蝙蝠(アーリマン)を作って島へ飛ばしていた。 お陰で道にも迷わず行き先も明確なので非常に助かる。 逃げたキューロビア兵は岩山の陰にある入口から洞窟の中に入ったそうだ。 迷わず、一気に洞窟の中へ侵入する。 「根源よ、荒ぶる雹雨の……」 ポメラが詠唱を始めた。 外周をぐるりと連絡通路が囲む2階部分に出た。 1階には、20名ほどの兵が待ち構えている。 2階の反対側では弓矢でポメラを狙っている連邦兵が見えた。 「アイツは任せるアル」 メイメイの言葉を信じて2階の弓兵は任せて、1階へ飛び降りる。 降りた自分へ兵が殺到するが、砂浜の時と同様、何の脅威にもなり得ない。 「ぐぁぁああ!」 2階の弓兵が1階に落ちてきた。 身体が痙攣している。 メイメイがどんな兵器を使ったのか気になる。 「颶風となりて、其を律せよ──」 ポメラの魔法の完成を見計らって、すばやく1階の広場から離脱しようとした。 だが、まだ息のある連邦兵に足を掴まれていることに気が付く。 ──笑っている。 初陣の時に出会ったあの笑っている男の顔を思い出し背筋が冷たくなった。 広場が真っ白になり、微かに悲鳴が聞こえてくる。 危なかった……。 左肩の赤い手がギリギリで部屋の隅っこに身体を引っ張ってくれた……。 これで片付いたはず。 階段を探して2階へ戻ろうとすると、ポメラの悲鳴が聞こえた。
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