戦火再演

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「私が右翼の指揮を?」 「もちろん、じゃなきゃ連合軍の(てい)にならんのでな」 戻ってきた……。 3ヵ月後、第3大陸暦101年8月のフェン・ロー平原での戦いの前夜。 カルテア王女とシンバ将軍のやりとりが終わる。 右翼側へ移動して、打ち合わせをする。 内容は、おおむね以前と同様でその後、準備を進める。 エンドリ3兄弟との顔合わせも終わり、彼らが部下になる。 ここまでは、予定通り。 だが以前と違う点は……。 「隊長、誰なんです? この女どもは?」 「全員、隊長の愛人だったりして」 「「それな!」」 エンドリ3兄弟に茶化されているのは、女性陣が多いから。 ニウ、リードマン姉妹、メイメイ。 彼女らが戦列に加わったのには色々と理由がある……。 まずニウ。 彼女は、以前の戦いでは首都クレイピアで待機だった。 だが、本人の強い希望があって従軍することになった。 なにが彼女をそうさせたのか、目的がなんなのかは分からない。 シンバ将軍やカルテア王女へ面倒を見る誓いを立てているのでサオン小隊にいる。 次にメイメイ。 彼女はリャムとともにホン皇国からついてきた。 理由は謎の多い自分を研究するため。 直剣(グラディウス)と左肩の赤い手もさることながら、まだ何か隠していると疑っている。 たしかにそうだけど、絶対に話さないでおこうと思う。 最後にポメラとセレのリードマン姉妹。 彼女達の首にはメイメイが取り付けた首輪がまだついている。 メイメイは皇国に残ってもいいと伝えたが、一緒についてきた。 皇女が死んでしまったら、ふたりも命も失うため、守ろうと考えたらしい。 シンバ将軍にお願いして、ふたりの指名手配を取り下げてもらった。 だけど風当りが強いのはたしか。 姉妹が酷い目に遭わないのはメイメイのお陰である。 メイメイがホン皇国の第6皇女だから。 別に言っても構わないと言われたのでジェイドに伝えた。 するとカルテア王女の耳に入り、シンバ将軍も知るところとなった。 ホン皇国は謎に包まれた国。 他国と親交もないが、敵対関係にもない。 キサ王国やジューヴォ共和国としては、構える理由はない。 だが、同時にあまり関わりたくない国だ。 シンバ将軍が国賓としてもてなそうとしたが、メイメイは丁重に断った。 彼女の目的はただ純粋に研究することだけにあるから。 自分が研究の対象である内はずっと近くにいそうな気がする。 カルテア王女がジェイドに丘への罠を依頼した次の日。 遂に戦端が開かれた。 幅が浅くて広い川を渡ったすぐのところでサオン隊は煙を焚く準備に入った。 しかし……。 レッドテラ帝国に動きがない。 以前、再演(ループ)で経験した時と違う。 森の近くまで、進軍した右翼と左翼はそこで一旦停止した。 シンバ将軍が率いる中央軍が渡河するのを待っている。 あそこまで深く進軍するのは想定外だった。 おそらくカルテア王女の目論見から外れてしまったはずだ。 あの位置から突撃されたら、右翼は相当な深手を負いかねない。
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