戦火再演

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「全員、ここで待機。敵軍に動きがあったら計画通り進めてくれ」 「サオン隊長! 俺らも連れていってください」 そう申し出たのはミカ、ルカ、シカ……エンドリ3兄弟。 自分ひとりなら何とかなるが、3人が一緒だと守り切る自信がない。 少し悩んだが、断ろうと口を開きかけたその時。 「また悪い癖が出てるアル」 メイメイがため息交じりに明後日の方向を見ながらつぶやいた。 そのひと言で思い出した。 皆、誇りと信念を持って戦っている。 ポペイの誘拐事件では亡くなった兵がいたが、誰もそれを後悔していない。 ジェイドの時だってそうだ。 かつて地下迷宮で「見くびるな」と一喝された。 もっと、まわりの人間を頼れ、か……。 ニウが従軍を希望した時、断ろうとした。 だが、たまたまその場に居合わせたジェイドに止められた。 ニウがなぜ戦場へ出ようとしているのかを考えてみろ、と。 その後、考えてひとつだけ分かったことがあった。 彼女の決意は彼女のものであって、自分がどうこう指図してはいけない。 例え皆が完璧ではなくても、力の限りを尽くせばいい。 皆、それぞれ決意してこの地に立っているのだから……。 「すまない、一緒に行こう」 4人で右翼本陣へ一度、合流することにした。 前へ移動していると、敵に動きがあった。 ゆっくりと森から出てくる帝国軍。 編成は以前、戦った時と違う編成。 右翼と左翼に全兵力を割いているのが見てとれた。 しかし、おかしい。 森から出てきたものの、すぐに進軍をやめる。 なにかを待っている? まるで、キサ・ジューヴォ連合軍がどう動くかを見ているかのように それに対し、シンバ将軍はなんの躊躇いもなく次の手を打った。 中央軍を二つに割って左翼と右翼に合流させる。 その瞬間、静寂を保っていた帝国軍が咆哮をあげ、突撃してきた。 その圧倒的な迫力に気圧される右軍。 シンバ将軍率いる中央軍が二つに割れた以上、丘までの撤退はない。 自分達4人もまだ右翼に合流できていないので急ぐ。 途中、気になるものが視界の隅に映った。 なんだアレは? 敵兵は右翼と左翼に編成し直したはず。 なのに……。 森の中央から凄い速さで、3つの真っ黒な群れが現れた。 敵なのは間違いない。 向かっている先は右翼のカルテア王女がいる場所!? 他に中央軍の左翼側と左翼側へとんでもない速さで疾駆している。 カルテア王女の本陣にその黒い敵部隊が突き刺さり、自軍の兵が波打った。 マズい。完全に押されている時の動きだ。 だが、ようやく最後方にいたカルテア王女の本陣へと到達した。 コイツは……いや、コイツ等は(・・・・・)? 記憶に刻まれたあの男の顔を鮮明に思い出す。 笑っている男。 あれから色々と考えてみた。 戦場において、笑えるのはなぜか? ひとつに他者を圧倒的な立場から一方的に蹂躙する思い奢る者。 ふたつ目に戦場という異常(・・・・・・・)さを己を誤魔化し陶酔している者。 そして精神に異常をきたした破壊者……。 戦場で、笑う人間が他にもいた。 その数、約20人(・・・・)……。
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