正敵邪正

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どうにか、サオン小隊と合流できた。 すぐにセレが治癒魔法を唱える。 だが、それでも命が助かるかは難しいところだと思う。 「ちょっといいアルか?」 「どうした?」 メイメイから背筋が寒くなる話を聞いた。 先ほどの笑う兵は、キューロビア連邦の紋章をつけていた、と……。 彼女は、魔導具「魔眼鏡」で前線の状況を確認していたそうだ。 もしそれが本当なら、帝国と連邦が手を組んだことになる。 メイメイは魔道具で先ほど他の2カ所も確認してくれたそうだ。 それによると、他の2カ所に向かったのも連邦兵だったとのこと。 移動には狼型の魔物を使っていたらしい。 移動速度が並外れていたので、とても驚いた。 騎乗者が降りると、狼の魔物は明後日の方向へ走り去ったらしい。 「それより左翼が危ないネ……」 メイメイが魔眼鏡を見ながらそう呟いた。 裸眼でもわかるが、遠目でもかなり分が悪そうに見える。 笑う兵達は明らかに指揮官であるカルテア王女を狙っていた。 同じように各指揮官の下へ笑う兵達が送り込まれたのだとしたら……。 巨象人(トゥスカー)のゴードやシンバ将軍は大丈夫なのだろうか? 「それでどうするの?」 たまらず、ポメラが口を開いた。 反王国派の彼女が、王族であるカルテア王女を頼っている。 本来すごく喜ばしいことだが、あいにく今はそんな感傷に浸っている暇はない。 「シンバ将軍は今、右翼側にいます」 王女カルテアはポメラの目をしっかりと見据えて返事をする。 シンバ将軍が率いる中央軍の精強さは大陸中が知るところである。 だが、それでもあの笑う兵はあまりにも危険極まりないと説明した。 「ここから3つの部隊に分けます」 シンバ将軍の本陣に行く部隊。 この場所で、右翼の退却に備えて煙を焚く部隊。 そしてダンヴィル補佐や負傷兵を先に後方の丘へ運ぶ部隊。 サオン小隊って50人しかいないのに3つのことを同時にやれるのか? 「その話に乗せてくれると嬉しいなぁ!」 「──誰だっ!?」 いつの間にこんなに接近していた? 見るとハイレゾ達、傭兵部隊。 顔なじみだが、今はレッドテラ軍側に雇われている。 森へ向かって右側の方へハイレゾだけが立っている。 だが、傭兵が100名近く草むらに潜んでいるはず。 剣を抜いて駆けだそうとしたミカを手を横に伸ばして抑える。 「よお、兄ちゃん、見覚えがあるし」 「そんなことより、早く用件を」 「まったく、せっかちだねぇ……まあ、いいさ」 ハイレゾの提案は以前と同じでキサ王国への離反の申し出。 「そんな話、こちらが信用すると思っているの?」 「アンタらの首を取るのは簡単さ、でも……」 カルテア王女が問い質す。 それに対して、ハイレゾが自分を見て、ニヤリと笑う。 「その兄ちゃんに俺達、全員狩られそうだからやめておくよ」 首をすくめながら両手を広げて持ち上げる仕草をするハイレゾ。 「カルテア様、実は……」 ハイレゾは最初から自分に頼るつもりでいたようだ。 以前、王女とダンヴィルを彼がワザと逃がした話をした。 「……わかりました。では、頼みましょう」 正直、王女はハイレゾ達をまだ信用しきっていないのだろう。 シンバ将軍の下に自分と傭兵隊が行くことになった。 彼らが裏切っても自分ひとりなら大丈夫だと判断したらしい。 「よおし、ようやく金ヅルができたぜ」 「ハイレゾ隊長、客人がいますぜ?」 「なぁに本当のことだ。構わないさ、なあサオン?」 「まあ、傭兵に無償で助けるって言われた方が気持ち悪い、かな」 「ははっ、言えてる! なかなか面白いことを言うじゃん!?」 中央軍の右翼へ合流した場所へ迂回しながら向かう。 ハイレゾが軽口を叩くので合わせてみた。 以前、ジェイドとハイレゾがやっていた軽口の応酬。 こういったのも慣れておけば、いつかきっと役に立つ。
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