正敵邪正

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さすがシンバ将軍直属の兵。 あの笑う男達と互角ではないが、けっして無様に陣形を破られてなどいない。 でも1か所だけ様子がおかしい。 大陸屈指の勇猛な兵たちが道を開けていく。 白い鎧に身を包んだ騎士風の出で立ち。 その周りを赤い鎧に身を包んだ騎士がふたりが囲んでいる。 たった3人で、本陣を切り崩して進んでいる。 「キサ王国小隊長サオンです、通してください!?」 大きな声で叫びながら、シンバ将軍を囲む密集陣形の輪に入っていく。 傭兵部隊は、シンバ将軍の本陣を包囲している笑う兵達を相手にしている。 これにより、敵勢力の包囲のさらに外側を包囲したので、三重の輪が出来上った。 「傭兵稼業で、あんなのと()り合うのは、マジであり得ないんだけど?」 傭兵隊長ハイレゾが愚痴をこぼしながらも、しっかり後をついてくる。 たしかに3人とも化け物。 傭兵としては、割に合わない仕事かもしれない。 だけど、あんな化け物に襲われたらシンバ将軍とて、ひとたまりもない。 しかし……。 「その3人に近づくな!」 「しかし、シンバ様!?」 「狙いは儂ひとりのようじゃ……」 シンバ将軍は、部下のこれ以上の犠牲は望まなかった。 部下たちでは、行く手を阻むことはできないと判断したのだろう。 戦っちゃダメだ。 敵の強さは尋常ではない。 戦えばシンバ将軍の命があぶない。 敗れてしまったら、この平原での戦いは負けが確定してしまう。 そうなれば帝国、連邦の両軍がジューヴォ共和国を蹂躙するだろう。 兵達は殺気立っており、コチラへ刃こそ向けないものの中々奥へ通してくれない。 シンバ将軍の武器は、棘のついた鋼の棒。 大人が両手でやっと振り回せるくらいの重さはありそう。 その鋼の棒を左右の手に1本ずつ持っている。 対する白い鎧の騎士は剣、赤い鎧の騎士は両手斧と戦棍をそれぞれ持っている。 両者が激突すると、幾条もの火花が散り始めた。 シンバ将軍を過小評価していた。 棘付き鋼棒を軽々と振り回している。 赤騎士たちの重そうな一撃を難なく弾き返す。 だが、白騎士の一撃はとても鋭い。 常人では目で追えないまま命を落としてしまうほど……。 シンバ将軍といえども白騎士の攻撃を完全に防げていない。 鎧の部位が次々に破壊され、将軍の身体から鮮血が噴きあがる。 致命傷をもらわぬよう巧妙に立ち回っている。 だけどそれも時間の問題……。 見かねてシンバ将軍の配下が横から剣を振り上げた。 「ぐぬぅっ」 配下を庇った将軍の左肩に白騎士の剣が突き刺さる。 すぐに棘付き鋼棒を振るって相手を後退させた。 傷はそこまで深くないはず。 だが、武器を自由に振るえなくなったと思う。
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