正敵邪正

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フェン・ロー平原で激しく衝突した初日。 キサ王国、ジューヴォ共和国軍は劣勢のまま夜を迎えることになった。 丘まで後退した連合軍は、左右の丘を確保し防衛戦に徹した。 夜になって、左翼の巨象人(トゥスカー)ゴードの安否がわかった。 やはり笑う兵……キューロビア連邦兵の奇襲に遭ったそうだ。 撃退に成功したものの負傷し、左翼の指揮が乱れてしまったとのこと。 左の丘まで撤退し、右の丘同様、守備に専念している。 ゴード自身、今は回復して火線に戻っているという。 しかし、無理をしているであろうことは容易に想像できる。 敵戦力は、丘に閉じこもっている連合軍を無視して進軍する手もある。 だが、その場合、確実にこちらに背後を取られる危険は承知しているだろう。 それに補給線を断たれた場合、一気に形勢が逆転する。 そのためジューヴォ共和国がいきなり脅かされることは無いと言える。 2日目の早朝。 シンバ将軍に呼ばれ、中央軍本陣の天幕を訪れた。 「特別遊撃隊ですか?」 「左様、お主に隊長をやってもらいたいと考えている」 特別遊撃隊……ハイレゾとジェイドの傭兵隊と斥候隊。 そして、鬣犬人(スカベンジ)ギュートンの隊から精鋭を加えた500人規模の特殊部隊。 その特別遊撃隊を率いて左翼将ゴードを救援してもらいたいとのこと。 「幸い、お主の連れや王女のお陰でここは問題ない」 昨夜は、帝国兵にとって、地獄のような一晩だっただろう。 メイメイから提供された魔導兵器。 それにニウ、ポメラの魔法が帝国兵を苦しめた。 セレの神聖魔法も聖職者の足りない中央、右翼陣営にとっては大変ありがたい存在。 それにカルテア王女は、シンバ将軍が認める人物。 彼女の用兵術は、いわば天賦の才だと将軍が話していた。 負傷した将軍に代わり、昨夜は中央軍、右翼を指揮して立派な結果を残した。 カルテア王女の卓越した指揮により、敵軍に甚大な被害を与えた。 右翼側は朝から優勢に戦いを始められるとみている。 やはり問題は左翼陣営。 ゴードが率いる巨獣兵団はその名の通り、巨体を誇る兵士の集まり。 そのため、正面からぶつかっても簡単に戦果が得られるため、策を必要としない。 だが、今回、そこを突かれる形となった。 まさか彼らのような猛者に奇襲をかけてくる集団がいるとは思いもしなかったはず。
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