正敵邪正

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「よく来てくれた」 「サオンです。よろしくお願いします」 「指揮官補佐ラファンだ。よろしく」 獣人族(テラノイド)白虎人(バイフール)のラファン。 最初の挨拶で、好感が持てた。 その一方で……。 「ふんっ!」 「あの……よろしくお願いします」 「ドリドル、彼もゴード指揮官の補佐をしている」 「ちっ」 灰熊人(グリズフ)ドリドル。 左の丘に来る前にジェイドから話は聞いていた。 かなり短気で無鉄砲なところがあるが、実力は確かだそうだ。 ラファン指揮官補佐は、元々はシンバ将軍の腹心。 昨日の中央軍を分割した時に2500の兵を任せられた人物。 一方、ドリドル補佐は巨獣兵団の副団長。 ゴード左翼将の旗の下で先陣を切るのは毎回、彼の役目だそうだ。 現在、ゴード指揮官は最前線に出ているとのこと。 シンバ将軍の使者が来たら内容を確認するように言われているという。 「具体的な命令はシンバ将軍からはありません」 「なんだと? じゃあ貴様は何しにここへ来た?」 「特殊部隊を率いて左翼を支援せよと仰せつかっています」 こちらの説明を聞いて、ドリドル補佐がテーブルに拳を叩きつけ怒鳴る。 すかさずラファン指揮官補佐が間に割って入った。 「それはあくまで君たちは独立して行動する、ということだね?」 「はい、そうです。ですが……」 敵大将カぺルマンを倒すために協力して欲しいと頼む。 「俺に命令したいんだったらチカラで従わせてみろ!」 「そんな無茶な……」 「いえ、大丈夫です。やりましょう」 ドリドル指揮官補佐の無茶ぶり。 それに対してラファン補佐が灰熊人を諫めようとしたが、止めた。 力ずくで従わせてみろ? いいね……その方がてっとり早く済む。 こちらは木剣、ドリドル指揮官補佐は木斧を手にした。 互いに木でできた鍛錬用の武器とは言え、本気で急所を狙ったら死に至る。 そのため、首から上や急所への攻撃は無しという条件で模擬戦を始めた。 「おらぁぁぁぁあっ!」 デカい図体なのに動きが速い。 あっと言う間に距離を詰めてきた。 木剣を砕いて、そのまま吹き飛ばせるであろう勢いで木斧を振るってきた。 少し屈んだだけで、木斧をかわせる。 だが、それだけでは腕力に物を言わせて、すぐに木斧を振り下ろしてくるだろう。 なので、屈んだ状態から木斧を思いきり木剣で真上に跳ね上げた。 ガラ空きになった胴への一撃。 木斧を持っている右手の肘へもう一撃与え、大きく仰け反らせる。 最後に背中へ渾身の一撃を入れて、膝をつかせた。 「まいった。人族(ヒューマ)の戦士サオン殿」 灰熊人(グリズフ)ドリドルは急に口調を改めた。 素直になった灰熊人と元々友好的な白虎人へある提案をした。 その後、すぐにこちらの提案通りに準備を始めてくれた。
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