正敵邪正

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「た、大変です。ペリシテの巨人が現れました!」 「デカい?」 「はい、身長は2M(メトル)を超えていると思います」 「そっか、じゃあ違う」 「え?」 ようやく出てきたか。 以前も勘違いしてしまったが、本物は意外と身体が小さい。 物見の索敵に引っかかったのは、恐らくカぺルマンの巨体を誇る従者。 前回、この大男が戦場で暴れ回ったせいで、かなりの犠牲者が出た。 放置してもいいことがないので、速やかに倒すことにした。 駆けつけたところ、丘の北西にある林の中で、左翼将ゴードと激突していた。 両者ともに巨大な戦棍(メイス)を振り回し、まわりの兵や木が巻き込まれている。 超大型級同士のぶつかり合いにジェイドが水を差す。 例の地下迷宮で手に入れた爆発する粉。 以前とは違って鏃のそばに小瓶がついている矢を側面から放った。 大男の分厚い皮鎧の脇腹あたりに矢が刺さり、爆発する。 負傷して動きが鈍ったところをゴードがトドメを刺した。 この後だ! 以前、大男を倒した直後に大将カぺルマンは現れた。 味方に気をつけるよう注意を促す。 だが、そんな自分達をあざ笑うかのように丘の上が騒がしくなった。 丘の上に戻ると、(けたた)ましい銅鑼や戦鼓が鳴り響いている。 良かった。 灰熊人(グリズフ)ドリドルや白虎人(バイフール)のラファンがまだ生きている。 前回、一方的にやられてしまった時、違和感を覚えた。 なぜ大将なのに単騎で敵地の奥深くへ入ってきたのか? そして、なぜ眉間にずっと(・・・・・・)皺を寄せていた(・・・・・・・)のか……。 口調が荒く、激昂型の性格だからではないかと思った。 だけどそれだけではない。 盲目、または日中に光がまぶしく感じる羞明(しゅうめい)なのではないかと考えた。 次に背後からの攻撃でも当たらない回避能力の高さ。 始めは超常的な能力かと疑った。 だが、声をあげた者から襲っていたので聴覚が異常に良いのだと仮定してみた。 すると彼に対する疑問がすべて解消した。 ひとりで戦っていたのは、味方を巻き込まないようにするためだと思う。 日が昇っているため、聴覚を頼りにしているはず。 予想は的中していた。 彼らに準備してもらっていた銅鑼や戦鼓が効果をあげている。 耳から入ってくる情報を大音量の音でかき消しているので、動きが鈍い。 それでも灰熊人(グリズフ)ドリドルと白虎人(バイフール)ラファンが二人がかりでも倒せていない。 「よし、そのまま音を鳴ら……」 ラファンは言葉を最後まで続けられなかった。 身体の中央に赤い筋が入ったかと思うと、真っ二つに割れた……。 くそっ、次から次へと。 見覚えのある赤と白の鎧。 この丘の上に来るまでに防御線が無数に張り巡らされているはずなのに……。 白と赤の鎧の騎士が参戦したことにより、丘の上はより混乱に拍車がかかった。
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