王国再興

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王国再興

「私にお任せくださーい!」 鬣犬人(スカベンジ)ギュートンがカぺルマンを囲む。 灰熊人(グリズフ)ドリドルと一緒にペリシテの巨人を抑え込もうと動いた。 ギュートンに先を越されたが、この状況下では最適な選択といえる。 カぺルマンは今、「耳」が使えていないので動きが鈍い。 それより、今もっとも危険なのは怪物じみた3人の騎士。 ハイレゾとジェイドと一緒に3騎士と向かい合う。 だが、ハイレゾはともかくジェイドはそこまで戦闘に向いていない。 後方支援してもらうとして、ハイレゾとふたりで怪物級の3騎士と戦えるのか? 白騎士と赤騎士のひとりを自分が受け持つ。 自然とハイレゾはジェイドの支援を受けながら、もうひとりの赤騎士と相戦う。 余力があれば、ハイレゾの援護をしようと思ったが無理かもしれない。 白騎士の剣が目の前に迫る。 あぶない……ほんのわずかでも油断したら、棺の中に入れられてしまいそうだ。 直剣(グラディウス)で弾いて、追撃に移る。 だが赤騎士の両手斧が自分の進路を塞がれた。 触れた武器や鎧を溶かす直剣(グラディウス)に耐性がある? 白騎士が持つ青紫色に怪しく光る剣。 何度も直剣と刃を交えるが、溶けもせず、折れもしない。 一方で赤騎士は両手斧をうまく直剣と衝突しないようように立ち回っている。 剣の特性に気が付いているとしか思えない動き。 両者とも今一つ攻めきれない状況が続く。 あらためてシンバ将軍の凄さがわかった。 ふたりでも大変なのに3人も相手をしていたなんて……。 ハイレゾの方はかなり苦戦している。 無理もない。 大将カぺルマンや地下迷宮主黒腕ジルほどではないが、赤騎士は化け物。 勝てないと早々にわかって負けない戦い方に切り替えている。 ジェイドの方は握った右拳を赤騎士へ向けていて動かない。 左手は右手に添えられており、なにかを狙っているようにみえる。 奥の方にチラリと見えるのは大将カぺルマンと鬣犬人(スカベンジ)ギュートン。 指揮官補佐ドリトルとふたりで挑んでいる訳ではない。 ギュートンの部下数十人の鬣犬人(スカベンジ)がぐるりと大将を囲んでいる。 一人ひとりはけっして強いとは言えない鬣犬人(スカベンジ)兵。 だが、包囲が完成した途端、けっして抜け出せない無限の回廊に変わる。 相手が正面を向いたら退がり、背中を見せたら前に出る。 斬るもの、刺すもの、捌くもの…… 行動をひとつ取っても数人が連係していて、まったく隙がない。 戦鼓を壊されてしまったが、銅鑼はまだ健在。 常に後ろで他の兵士が鳴らしている。 そのお陰で、カぺルマンの雷のような動きを失速させている。 圧倒的強者に対して、彼らは(はな)から倒そうという気はさらさら無い。 ハイレゾ同様に時間を稼いでくれている。
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