王国再興

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膠着した状態がしばらく続いた。 どこかで均衡が崩れたら一気に片が付く……そんな熾烈な戦い。 ハイレゾが石につまづき、後ろへよろけた。 その瞬間、赤騎士とジェイドが同時に行動へ移した。 戦棍(メイス)をハイレゾにめり込ませようと前に出る赤騎士。 その赤騎士に向けられているのはジェイドの右拳中指に嵌められた赤い指輪。 以前、地下迷宮で手に入れた用途不明の魔法具。 その指輪から黒い塊が発射されると、網のように広がり赤騎士を絡め取った。 ジェイドはすぐさま弓矢を手に取った。 爆発する粉をつけた鏃につけた矢を立て続けに放ち、赤騎士を幾度となく爆撃する。 ハイレゾは体勢を立て直すと、大斧を持った赤騎士へ真横から接近した。 大斧を持った赤騎士は忍び寄ってきた敵に気が付き、迎撃するべく身構える 赤騎士から受けていた重圧が減ると同時に自分に余力が生まれた。 白騎士の兜を下から切り上げて、怯ませ後退させる。 その隙にハイレゾへ意識が向いている赤騎士へ黒腕の籠手で金属球を飛ばした。 こめかみを撃ち抜いて一撃で赤騎士を倒す。 すぐさま白騎士を追撃しようと直剣(グラディウス)を握り直した。──だが。 まただ……。 白騎士は昨日同様、発作が起きて頭を抱え始めた。 隙だらけだが、剣を振り下ろす気にはなれない。 斬り上げた兜が地面に落ちるとすごく懐かしい顔が姿を見せた。 銀髪、灰眼なので見間違えようがない。 幼少期に孤児院で一緒に育った親友、ユリアル……。 7歳の誕生日にキューロビア連邦に連れて行かれたきり8年ぶりの再会。 剣を地面に落としたまま頭を抱えうずくまっている。 「やむを得まい……」 「くそっ、逃がすか!?」 ジェイドの悔しがる言葉が聞こえた。 振り返ると黒い網に絡め取られていた赤騎士が網を切り裂き抜け出していた。 赤騎士は白騎士を捨て置いて、そのまま丘から崖下へと飛び降りた。 「ダメだ、待ってくれ!」 「あん? なぜだ?」 ハイレゾとジェイドが白騎士にトドメを刺そうとしたところを止めた。 ジェイドが不服そうな表情を露骨に示した。 だが、止めたのにはちゃんと理由(わけ)がある。 「メイメイに……メイ皇女に頼まれたから」 笑う兵を連れてこいという話だったが、ユリアルでも構わないだろう。 ユリヤルの拘束をまわりの人に頼んで自分のすべきことをやる。 「残るはアンタひとりだ。レッドテラ帝国軍大将カぺルマン!」 「サオン殿……」 「自分に任せてもらえませんか?」 戦鼓に続き、銅鑼も鳴らしていた兵ごとやられてしまっていた。 もう少し白騎士赤騎士との戦闘が長引いていたら、こちらが危なかった。 戦場の掃除人、鬣犬人(スカベンジ)の包囲網を広げてもらい、輪の中に入って行く。 呆然と立ち尽くすドリドルに退がってもらい、ペリシテの巨人と対面した。 「降伏に応じるなら命までは奪わない」 「このクソ雑魚がっ!? 誰に向かって口を利いている!」 まあ、そうなるか……。 横へ唾を吐き捨てる敵軍大将に直剣(グラディウス)を向ける。 「雑魚かどうか、試してみなよ?」 「テメーを捻り潰して、他の連中もぶっ殺す!」 目の前の怪物はその言葉通り、敵軍を壊滅できるほどの実力を備えている。 だけど、自分がいる。 もう好き勝手にはさせない。
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