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 迷うたびに父さんは言った。選択は悲しみではなく希望だ、と。そう思えないときのほうが多いけれど。  何といっても、守護神を選ぶことは、自分の一生を決めるのと等しいのだ。いうなれば束縛であり、将来学ぶことや職業も、すべて選んだ神が象徴する学問となる。  気づかぬうちに流れた涙を拭い、ファーシェは肩ほどまで伸びた亜麻色の髪を払う。  きっと、だいじょうぶ。そう信じながら長袖のワンピースに腕を通して、壁にかけられた鏡を覗く。  不安げな黒土色の瞳が、見つめ返してくる。選択は希望。だからもっと、楽しそうに、明るくすごさないと。鏡の中の少女は微笑んだ。灰一色の草原で淡い紫をまとった、春風に揺られるヒンメリアのように。  明るく……はないかもしれないけれど、少なくとも不幸には見えない。
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