Advice

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「国定。彼女はね、私の唯一の友達だったんだ。あいつは爆弾犯だと分かっていて、助けたんだよ。きっと。」 外事第四課は爆弾犯の大木と取り引きをして、大木は新たなSとなった。彼は、別の班がテロ組織の内偵をする支店に移された。 この爆弾犯に友人の警官を殺された井口主任が、このSの主には不適格と見なされたからだった。 井口に誘われるまま、国定は居酒屋で酒を飲んでいた。初めて聞く井口の思いが、吐き出し尽くされるのを傾聴する。慰める言葉など、ありはしないから。 能面も涙を流すのだと、初めて知ったのもこの夜だった。表情が変わらないまま、涙が伝ってゆく。本当に悲しい表情とは、無から生まれるのだと知ったのもこの日だった。 夜がゆっくりと更けてゆく。 国定もいつか、こんな夜を迎えるような気配を感じながら。
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