Marriage

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「どうですか?お口に合いませんかここの料理は。」 「ひ、非常に、お、美味しいです!」 優しい口調と、上品で隙のないエスコートは見事というしかない。覗き込む男性のそうした眼差しに、不慣れな間取はドギマギとしてしまう。 教授から有無を言わさず見合いをするように命じられた間取医師は、相手が大学の先輩で警視総監から直々に頼まれたと話す一方的な教授の申し出に抵抗など出来ようはずもなかった。 見合い相手は、弥彦という警視正だった。間取の大学の先輩で法学部出のエリートだが、結婚した後も仕事に専念して欲しいという願ってもない条件だという。これを逃したら、お前に人間との結婚は無理だと断言された。 会ってみると物静かながら穏やかそうな人柄で、話さなくても場が白けることなく仲人と別れたあとも、こうしてすんなり会員制のレストランで食事をするに至っていた。人付き合いの良い方では無い間取にとっても意外だった。 間取は孤児なのだが、それがかえって楽だという。変な人だなと思いながら、豪華な食事を無言でパクパクと平らげていてもにこにことしている。 丁度、間取の好物のタブレが運ばれてきた時だった。(うわ〜クスクスだ!)と口に入れようとした瞬間。 ズドーン!! 間取の皿の横に、バカデカい手が落ちて来て、クスクスの皿が吹っ飛んだ。 「!!おい、行くぞ間取!」 「黒岩!!お前どうしてここに?!」 二人は睨み合ったまま、黒岩が強引に間取の腕を取った、が…。 「間取?」 ピクリとも動かない間取の顔を覗き込むと、唇は紫色になりチアノーゼが広がっていた。 「おい?! 息しろ!!まとり!!!」 「ははは〜!ショック起こさせるなんてどんだけお前嫌われてんの?」 「アホ!そんな呑気な事言ってんじゃねぇ!救急車呼べ、弥彦!!」 「え?」 間取の意識は、すでに失われていた。
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