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Spy
ここは都内某所のオフィスビル群の一角。各階には、様々な企業が入っていることになっている。俺の働く会社もここに入っている。
「Sはまだなのか?」
俺の上司の弥彦管理官が、珍しく自室のブースへと俺を呼び入れて、開口一番そう詰問してきた。
俺はある事案の処理のため、桜田門の本店から数ヶ月前にこの支店勤務となっていた。
20歳そこそこで、外事を扱う第四課の係員に抜擢され半年も経ないうちの異動だ。喜ばしいのか悲しむ事かすら、わからない。
「彼女は適任者と思えません。」
俺が率直な感想を述べると、弥彦警視正はその澄んだ瞳の奧に激しい炎を見せて俺をすくみ上がらせた。
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