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「具合はいかがですか?」
病院での治療が奏して、回復した僕への警察からの取り調べが始まった。能面のような女と若々しい20代の男が先程の男達とまた入れ替わるように入って来た。
「あの…さっきもお話ししましたけど。また話すんですか?」
刑事ドラマお決まりの台詞を、僕は言うことになった。おそらく管轄が違うのだろうと、ぼんやり思いながらも先程の恐怖を味わいたくなくて抵抗した。
「お疲れとは思いますが…。」
「何度言ったらわかるんですか!本当に偶然なんですよ!」
「え?何のことですか?」
互いに顔を見合わせて、息を飲んだ。
「誰に何を聞かれたんですか?」
若い男の警察官が、顔色を伺うように聞いてくる。
どうやら僕は、墓穴を掘ったようだと気づいた。さっきの背の高い警官は、執拗に僕が何故現場にいたのか、それだけを聞いてきた。
真っ黒なスーツを着た、悪魔のような鋭い眼光と冷たいもの言いが、僕の心臓を握り潰すような尋問を繰り出してきた。
「黒岩という警官です…。」
辛うじてそれだけを言うと、僕は布団を被って耳を塞いだ。
「黒岩?! 警視庁捜査一課長か?」
井口主任と俺の顔色は、さっと青ざめた。黒岩と言えば、知らない者はない警視庁きっての切れ者で、俺たちの上司である弥彦の同期。正真正銘のライバル関係の人物だ。
彼が何故ここに?そして、何を狙っている?
二人は、布団を被って口をつぐみ震える男に対峙しながら、計り知れない闇の大きさを知った。
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