13人が本棚に入れています
本棚に追加
Enemy
「この度は、大変申し訳ない事態に巻き込んでしまいました。謹んでお詫び申し上げます。」
『桃源郷』の運営する『最先端医療山の手病院』に入院する被害者のひとりである僕の所にも、桃源郷本社支配人の男がやってきた。
外国人だが流暢に日本語を話し、仕立ての良いスーツを着た、いかにも一流企業の若手重役という上品な男だった。
見舞金として差し出された小切手に、僕は心が踊ったが顔には出さないように気をつけた。
そんな時に、あの黒岩という悪魔のような男が再び病室に入ってきたのだった。
黒岩は、流暢な英語で支配人に話しかけると、それまでの表情から一変して支配人も鋭い表情を顕にした。
何を話しているのか分からない、もの凄いスピードで会話する彼らは、暫く睨み合うように会話を続け、黒岩の死神が笑ったような表情で会話が終わった。
「邪魔をした。」
そう黒岩が僕に言い、ホッとしたのもつかの間だった。病室のドアから能面女の警官と若い男の二人が入ってくる。
「大木茂。激発物破裂罪ならびに傷害、殺人の容疑で逮捕状が出ている。」
僕の頭は、再び真っ白になった。
最初のコメントを投稿しよう!