EP-11

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「はい、心の底から思っています……」 私は首をすくめた。 諒だったからまだ良かったものを、いや、本当は全然良くないけれど。行きずりの相手ではなかっただけ、まだマシだったという話でしかない。恋人でもなんでもない、兄とも慕っていたはずの幼馴染である諒と、私は体の関係を持ってしまったのだ。 これから先、諒とはどんな顔をして会えばいいのだろう。絶対に会わない関係だというならまだしも、そういうわけにはいかないだろう。私の従兄の凜と諒は親友同士、諒の妹の栞と私も親友同士、そしてさらに付け加えるのならば、実家の両親たちは仲の良いご近所同士。 こんなことになってしまって、どうしよう……。 私はベッドの上に正座して、諒の前にがばっと手をついて哀願した。 「諒ちゃん、今夜のことはお互いに過ちだった、夢だったということで、どうかなかったことにしてください。お願いだから全部忘れて下さいっ!」 「はぁ?」 諒は私の方へずいっと体を近づけた。 私は諒から離れるように体を引く。 「今、忘れてと言ったかな?……いいか、瑞月。最初からきっちり説明してやるから、よく聞けよ」 「な、なんでしょう……」 こんな言い方をする諒は初めてで、私はますます首をすくめて身構えた。 怖すぎるよ……。
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