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雑貨店を出た私たちはお目当てのパンケーキを求めて、女性客でにぎわうカフェに入った。
凜はパンケーキを幸せそうな顔で口に運びながら、思い出したように言った。
「そう言えばさ。瑞月ちゃんの幼馴染の久保田君ね」
「諒ちゃん?」
「今年になって、わたしたちが同じクラスになった話はもう聞いた?瑞月ちゃん、彼にもわたしのこと、言ってあったんだね」
「うん。去年、同じ学校に入ったって聞いた時に教えてあったよ。だって、もしも二人が仲良くなったらいいなぁ、って思ったから」
すると凜は苦笑を浮かべた。
「あのねぇ。彼、色々と誤解してたみたいよ」
「何を?」
「わたしの名前がこんなだから、仕方ないとは思うけど。女だと思ってたみたい」
「……そう言えば、名前しか伝えてなかったかも」
「肝心なとこが抜けちゃったのね」
「だって、別にたいしたことじゃないでしょ?男だとか女だとか」
「それはそうなんだけど……」
「それで?仲良くできそうだった?」
すると凜は、やや複雑そうな顔をして私を見た。
「わたしは、仲良くしたいと思うんだけど……」
「うん?」
含みのある凜の言い方に私は首を傾げた。
「ま、いいわ。ところでこの後、本屋さんに寄りたいんだけど、瑞月ちゃんはどうする?」
「一緒に行く。私もほしい本があるんだ」
その後カフェを出た私たちは、そこからいちばん近い本屋へ足を向けた。並んで歩いていると、突然後ろから名前を呼ばれた。
驚いて振り返ったそこに、諒の姿を見つけて私は足を止めた。
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