EP-2

5/9

874人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
「諒ちゃん?偶然だね」 そう言って笑いかける私に向かって、諒はずんずんと近づいてきた。 いつものように彼も笑い返してくれると思ったのに、なぜか眉根を寄せている。 怒っているように見えるんだけど、どうして……? 「あの、諒ちゃん?」 おずおずと声をかける私に、諒は不機嫌な顔を見せた。 「何してんだよ」 「何って……。これから本屋さんに行くところだけど」 「どうも。久保田君、こんにちはっ」 私たちの間に割って入るように、凛が諒に声をかけた。しかもなぜか声のトーンがいつもよりもさらに低い。 あぁ、そうか。私以外には素の自分を秘密にしているんだった、と納得する。 諒は目を丸くして、凛と私を交互に見た。 「高山?」 「いつも瑞月ちゃんがお世話になっています」 にこやかな笑顔を向ける凜に、諒は動揺した様子を見せた。 「お前、なんで瑞月といるの?」 なぜか凜を問い詰めるような口調の諒に、私はびっくりしてしまった。 しかし凜はさらりと答える。 「なんでと言われても……。だって、俺たちがいとこ同士なのは知ってるでしょ?普段から仲もいいしさ。ね?瑞月ちゃん」 そう言うと凜は私の肩に腕を回した。 「凛ちゃん、ちょっと。この腕どけて。重いよ」 「ごめんごめん」 凜は腕を離すと、笑いたいのを我慢しているような顔で言った。 「そうだ。久保田君も一緒に行く?そこの本屋なんだけど」 「行くに決まってるだろ」 諒は仏頂面のまま答えた。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

874人が本棚に入れています
本棚に追加