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「諒ちゃん?偶然だね」
そう言って笑いかける私に向かって、諒はずんずんと近づいてきた。
いつものように彼も笑い返してくれると思ったのに、なぜか眉根を寄せている。
怒っているように見えるんだけど、どうして……?
「あの、諒ちゃん?」
おずおずと声をかける私に、諒は不機嫌な顔を見せた。
「何してんだよ」
「何って……。これから本屋さんに行くところだけど」
「どうも。久保田君、こんにちはっ」
私たちの間に割って入るように、凛が諒に声をかけた。しかもなぜか声のトーンがいつもよりもさらに低い。
あぁ、そうか。私以外には素の自分を秘密にしているんだった、と納得する。
諒は目を丸くして、凛と私を交互に見た。
「高山?」
「いつも瑞月ちゃんがお世話になっています」
にこやかな笑顔を向ける凜に、諒は動揺した様子を見せた。
「お前、なんで瑞月といるの?」
なぜか凜を問い詰めるような口調の諒に、私はびっくりしてしまった。
しかし凜はさらりと答える。
「なんでと言われても……。だって、俺たちがいとこ同士なのは知ってるでしょ?普段から仲もいいしさ。ね?瑞月ちゃん」
そう言うと凜は私の肩に腕を回した。
「凛ちゃん、ちょっと。この腕どけて。重いよ」
「ごめんごめん」
凜は腕を離すと、笑いたいのを我慢しているような顔で言った。
「そうだ。久保田君も一緒に行く?そこの本屋なんだけど」
「行くに決まってるだろ」
諒は仏頂面のまま答えた。
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