EP-15

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EP-15

あの日から二週間ほどが経っていた。 連絡すると言っていたくせに、諒からは何もない。恋人役を頼まれたけれど、実際にはそれらしいことは何もしていない。私からもコンタクトは取っていないから、まったく本当に何もない。あの夜のことは、実は全部が夢だったんじゃないかと思えてしまうほどだ。 諒に愛されたあの翌朝、私はいつもバッグに忍ばせているマイバッグの中に彼から借りたものを入れて、逃げるように玄関に向かい靴を履いた。 見送ろうとしてか、諒はゆっくりとした足取りで後を着いてきた。 私は彼の顔を見ないまま言った。 「借りたものは後で洗って返すから……」 「ありがと」 諒の口調は驚くほど普通だった。 どうしてそんなふうに、何もなかったような態度でいられるのよ。 私は彼の様子に苛立って、八つ当たりめいたことを思う。 夕べは送っていくとか言っていたくせに、もう忘れているの? 「それじゃあ……」 うつむき加減にドアを開けた私に、諒はさらりと言った。 「またな。連絡する」 肩越しにちらと見上げた彼の顔には、今までと変わらない笑みが浮かんでいた。 そのことが私の神経をますます逆なでする。ぷいっと顔を背けて無言でドアを開けて玄関を出た。 「はぁっ……」 外の空気に触れた途端に、疲労感、罪悪感、後悔、羞恥、混乱――もろもろの感情が一気に押し寄せて来た。私はもう一度深いため息をついて、肩を落としながら諒の部屋を後にしたのだった。
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