EP-15

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私はアプリを開いた。文字を打ち込もうとして、指を止める。書き出しをどうしようか迷った。 元気?それとも、やっぱり「こんばんは」で始めた方がいい? 最初のほんの数文字に頭を悩ませていると、急に着信音が鳴って驚く。慌てて確かめた画面には、諒の名前が表示されていた。一瞬だけためらったが、携帯をきゅっと握りしめ、ひと呼吸置いてから電話に出た。 「……もしもし?」 ―― 俺、諒だけど。今って、どこにいる? 電話越しの声は知らない人のもののように聞こえて、少しだけどきりとした。 「部屋、だけど」 ―― そうか。あのさ、これから行っていい?腹減っててさ。なんでもいいから食わせてくれないか。 「え……」 私は思わず絶句した。この前のことを謝るところから始めてほしかったわけではない。しかし、二週間ぶりの電話の中身が、腹が減っただなんて、と脱力する。一人でぐるぐると頭を悩ませていたのがばかばかしく思えた。 ―― だめ? 電話の向こうで、諒は珍しく甘えたような口ぶりで言う。 私は口ごもりながら答えた。 「今からだと、たいしたものは作れないけど。それでもいいならいいけど……」 嬉しそうな諒の声が聞こえる。 ―― やった。それじゃあ、今から行くから待ってて。 そう言うと、諒は一方的に通話を切った。 「まったく、なんなのよ。どうしてそんなに普通なの」
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