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私は、二人と一緒にいるのが急に居心地悪くなってしまった。早く家に帰りたくなったが、ひとまず目的の物は買おうと思い、本屋に入る。目当ての本はすぐに見つかった。それを手に取り、ふと横を見ると、なぜか諒は私の傍から離れずにいる。
「あの、諒ちゃん、見たいものがあるなら見てきたら?」
「ん、今度またゆっくり見るから、いい」
「そう?」
それならどうして本屋に着いてきたのかが分からない。不思議に思っていると、凛が声をかけてよこす。
「瑞月ちゃん、欲しかった本は見つかった?」
「うん」
「じゃ、一緒に買おうか」
「いいの?ありがとう」
「ふぅん、高山にも素直に甘えるんだな」
諒の不満そうなつぶやきが耳に入り、私は聞き返した。
「え?何のこと?」
「な、なんでもない」
諒ははっとしたように目を逸らすと、外で待っていると言って店を出て行った。
変な諒ちゃん……。
私は首を捻りつつ、凛と一緒に店を出る。
諒は携帯に目を落としながら立っていた。
私は二人に言った。
「あとは一人で帰るね」
「何言ってるの?家まで送っていくよ」
「でも凛ちゃんの家、方向が違うじゃない」
「それなら、瑞月は俺が送る」
「だったら二人で送って行こうよ」
凛はそう言うと、私の手を取って繋いだ。
「ちょ、ちょっと、凛ちゃん。この手、何?」
「いいからいいから」
凜はちらりと諒を見ると、愉快そうに口元を緩める。
諒はやっぱりむすっとした顔をして、歩き出した私たちの後を着いてきた。
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