EP-16

8/9
前へ
/176ページ
次へ
頭の中が混乱しそうになった時、さっき取り損ねた電話がまた鳴った。しかし今度はすぐに切れる。それからほどなくして、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。 この声は……。 首を回した先に、私たちの方へ駆け寄って来る諒の姿が見えた。 「諒ちゃん……」 思わず洩れた私の声に、将司の手が緩む。 その隙に逃げた私は、諒の元へと走った。 「大丈夫だったか」 「うん……」 諒は私の肩を抱きながら、将司の前に立った。 「瑞月に何をしてた?」 将司は、突然自分の前に現れた諒に明らかに戸惑っていた。 「何もしていない。ただ話をしていただけだ。誰だか知らないが、邪魔をしないでくれ」 「話?あんな風に肩を掴んで?あんた、瑞月とはどういう関係だ?」 諒は将司をじろりとねめつけると、私を守るかのように自分の傍にぴったりと引き寄せた。 「俺は……」 言い淀む将司に、諒は人の悪そうな笑顔を向けた。 「あぁ、もしかしてあんたのことか?浮気して瑞月を傷つけた元カレっていうのは」 将司の声がかすれた。 「それは……」 「それで、元カレがここで何を?二度と浮気はしないからとでも言って、瑞月とよりでも戻そうとしてた?それで、瑞月は許すって言ってくれたのか?」 「だから、話している途中だったんだ」 「瑞月は頷かないよ」 「他人のお前が口を出すな。第一、お前こそ、彼女とはどういう関係なんだ」 諒はただくすっと笑う。
/176ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1126人が本棚に入れています
本棚に追加